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スネオの夏 その2
昨日やつの続きですよ






スネオの夏

http://ex14.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1137913187/

スネオの夏
スネオの夏 その2
スネオの夏 その3





242 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/22(日) 23:31:20.63 ID:pUdjCgkV0
「売られてたって…」

僕の言葉に、ドラエもんは戸惑いを隠せないでいた。
無理もない、友人の家が突然売りに出されていたのだ。
誰だって信じようはずもない。

「何かの間違いでしょ」

彼は無理に笑って、そう言った。
僕は無言でポケットに手を入れ、くしゃくしゃになった紙片を取り出し、
開いて見せた。


『売家』


僕らとスネオを断ち切ったあの紙片を。

243 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/22(日) 23:32:30.67 ID:pUdjCgkV0
「これ…なんで……」

ドラエもんは、信じられない、と言った表情で張り紙を見つめる。
僕は彼の言葉を待ったが、茫漠と紙を眺めるばかりで何も喋ろうとはしなかった。

のび「……ジャイアンがさ、張り紙を見てさ、
『ふざけんじゃねえ!そんなのって…そんなのって、あるかよ!』
ってね、すごい勢いで怒ってさ、ビリビリって張り紙破っちゃったんだよ。
人の家なのにね。
ジャイアンは本当、短気でさ…
こんなことしたらいけないって…分からないんだね……」

嘘をついた。
ジャイアンは、それはいけないことだと知っていた。
そして、自分の行為に何の意味もないことも。
それくらいは、分かる。
泣きながら張り紙を踏み付ける彼の姿を見れば、そのくらいは。

244 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/22(日) 23:33:35.12 ID:pUdjCgkV0
ドラエもん「どこに、行ったんだろうね…」

ドラエもんは、思い出した様にぽつり、と呟いた。

ドラエもん「引っ越したのかな……」

間延びした彼の声が、僕の神経を逆撫でしていく。

ドラエもん「スネオくんのところは、お金持ちだから、
新しくおーっきな家でも建てたんじゃないかな……」

やめてくれ、僕が欲しいのは、そんな言葉じゃない。
そんな言葉じゃ、ないんだ。

ドラエもん「どっちにしたって心配しても仕方がないよ。またひょっこり顔出す…」
のび「やめてくれ!!」

たまりかねて僕は、ドラエもんの肩を掴んで詰め寄った。
どん、という音がして、彼が壁にぶつかる。
ドラエもんの顔をじっと見つめた。彼は一瞬僕と目を合わせ、すぐに逸らした。

245 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/22(日) 23:34:29.97 ID:pUdjCgkV0
のび「僕が、僕らが今欲しいのはそんな言葉じゃないことくらい、分かるだろ?
僕が君に何をして欲しいか、気付かないわけじゃないだろ?」

僕は一気に捲し立て、彼の挙動を見守った。

反応は、なかった。
目は相変わらず、僕を見ようとしない。

「……分かったよ、ハッキリ言うよ。
尋ね人ステッキを出してくれよ。
どこでもドアを出してくれよ。
ドラエもんなら、君なら、スネオを探すことくらい訳はない。
そうだろ!」

最後は、叫ぶように言った。あまりの声の大きさに、自分自信が驚いたほどに。

246 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/22(日) 23:35:14.44 ID:pUdjCgkV0
嬌声の反動で、僕らの周りは恐ろしくまでの静寂に包まれた。
僕は彼の言葉を待つ。もう、叫ぶこともない。

永遠にも思われる長い沈黙が二人を支配する。
実際には5分も経過していなかったが、彼の言葉を待つその時、
時間は無限に身を委ねた――そんな風に感じられたのだ。

そしてドラエもんは、諦めたように溜め息を付くと、ようやく口を開いた。
「ポケットは、ないんだ」
視界が、白く霞んだ。

264 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:10:03.48 ID:Up81u9Qs0
ポケットは、ない。

不意に浴びせかけられた言葉、僕は虚脱したような気分に囚われた。
その後、ドラエもんは明らかに躊躇いの表情を浮かべながらも、苦々しく続けた。

「……先月のことなんだけどね。
ほら、君のために『ムシスカン』を出した時があったでしょ?
あの次の日くらいに、四次元ポケットの口が、急に開かなくなったんだ」

266 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:10:58.29 ID:Up81u9Qs0
覚えている。

僕が自分の不甲斐なさに嫌気が刺し、静ちゃんと距離を置こうとした、あの日のことだ。
そういえばあの日から、ドラエもんが道具を出すのを目にしていない。

「それで今は…修理に出しているんだけど…」

言葉が耳を上滑りする。
聞きたくない。僕はそんな言葉は、欲しくなかったんだ。
ただ道具を出してくれれば、僕はそれで――

「だから、のび太くん。今回は何もできそうにないんだよ。
だから、信じて待とうよ…」

267 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:11:55.94 ID:Up81u9Qs0
「スペアポケットは!」

気付くと僕は、また泣いていた。泣きながら、また叫んだ。

「スペアポケットがあるはずじゃないか!
君の、布団の下には!
スペアポケットが!
ねえ、そうでしょ?!」

スペアポケット。
もう一つの四次元ポケット。
あれがあれば、何も問題はないはずだ。
彼は意外なところで抜けているので、今の今までその存在を忘れてたとしても、
不思議はない。

268 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:12:23.95 ID:Up81u9Qs0
しかしそれは、その願望は、理想に過ぎた。

ドラエもんは重く閉ざした口を、ゆっくりと開いた。
「スペアポケットもないんだよ、のび太くん」

269 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:13:00.74 ID:Up81u9Qs0
「どうして?!そっちまで壊れちゃったの?!」
「違うんだ……そうじゃなくて……」

ドラエもんは大きくかぶりを振った。
彼は、何かを言いたいんだけど何も言えない、そんな複雑な表情を浮かべている。
僕は彼の目をじっと見た。

しばらく時間が経ち、彼は大きな溜め息をつくと、喋るよ、とぽつり、呟いた。

ここからは長くなるので簡潔に纏めることにする。

270 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:13:41.84 ID:Up81u9Qs0
率直に言うと、彼がポケットを修理に出した時、行政からの監査を強いられた。
そして彼の道具はつぶさに調べられ、直接の査問経た結果、行政はある勧告を出すことになる。
難しいことは分からなかったが、どうやらドラエもんは歴史に介入しすぎた、
と判断された。
その結果、道具の使用を無期限で禁止された、ということだった。

271 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:14:39.05 ID:Up81u9Qs0
「そんな……」
「もちろん僕が歴史を変容する目的で過去に来ているわけじゃないことは言ったよ。
でも……ダメだったんだ。
一応今は、嘆願書を出して、その回答を待ってる段階なんだけど……」

今回のことは、無論、彼のせいではない。
僕のためを思ってやったことの積み重ねが、今の状況を作り上げた、
そのくらいは分かる。僕にも。

でも……理屈ではなかった。
抑えようのない怒り、言葉にできない憤りが、僕の胸でかさを増やし、遂に――

爆発した。

274 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:15:43.00 ID:Up81u9Qs0
「こんな時に…こんな時に何やってるんだよ!
ドラエもんにポケットがなきゃ、何も意味がないじゃないか!」
言ってしまった。止めたかった。言葉はしかし、止まらなかった。

「道具がなきゃ、ドラエもんは何もできないんじゃないか!
友達の一大事だってのに、何も!」

「そ、そんな言い方はないじゃないか!僕だって好きでこんなこと…」

言葉を遮って、僕は叫んだ。
「うるさいこの青ダヌキ!!」

その言葉に、ドラエもんの顔が怒りに染まるのが分かる。
「僕はタヌキじゃない!!この分からず屋!!」

どうしてこうなるのだろう。
喧嘩なんて、するつもりじゃなかったのに。
僕はただ、スネオが、どこにいて何をしているのか、知りたかっただけなのに。

293 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:36:20.09 ID:Up81u9Qs0
―――これが、この6月にあった出来事だ。

僕とドラエもんの距離は、以前と同じ様では無くなった。
彼が憎いわけではない。
彼に道具がなくても、彼への思いに揺るぎはない。
そんなのは、USO800を飲んだ時から――分かっている。
ちょっと笑って、少しだけおどけて、

「ごめんな」

それだけのことで、僕らの仲が戻ることも……知っている。
しかし僕らにはそれができない。
『それだけのこと』だから、なおさら。
言葉ではうまく言えないけど、きっと。

294 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:37:05.69 ID:Up81u9Qs0
ジャイアンの元気も、日に日になくなっていった。
友をなくした喪失感からだろう、と単純に考えたけど、
どうやらそれだけではないのかもしれない。

思い出す。スネオがいた日々のことを。
ジャイアンは、いつもスネオを付き従えていた。
彼は粗暴で、いつもスネオから色んな物を取り上げていた。
普通に考えたらそんなものは友達でもなんでもない。贔屓目に見ても、ひどく歪な関係。

296 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:37:59.01 ID:Up81u9Qs0
でも、二人はいつも一緒だった。
殴られ、蹴られ、物を取り上げられ……それでもスネオは、ジャイアンのそばに。

(もしかしたら)

不意に思った。

(もしかしたら、ジャイアンは、スネオを愛していたのかもしれない)

そんなことを、漠然と。

もしそうだとしたら、ひどく不器用な愛情表現だよなあ、
あいつ、彼女ができても苦労するだろうなあ、
と僕はつまらないことを考え、つまらなそうに笑い、そして深い溜め息を吐いた。

298 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 00:38:50.30 ID:Up81u9Qs0




一学期最後のホームルーム。
プリントが配られ、先生は機械的な注意事項を読み上げる。

海に一人で行ってはいけない。
子供だけで花火をやってはいけない。
夜に家を出てはいけない。
校区外に出てはいけない。
いけない。いけない。いけない……。

どこにも行けない僕。
どこにもいないスネオ。
彼の席は、今も主を失ったまま、学び舎の一室でぽつねんと佇んでいる。

スネオはまだ、帰って来ない。

315 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:07:16.01 ID:Up81u9Qs0
夏休み。8月15日。

遠い昔、戦争が終わった頃。暑さも最高潮を迎える頃。
裏山に寝転び、流れて行く雲を見ながら、
(戦争の頃も今も、友達の形は、変わらないのかな)
そんなことを考えた。
その答は中空を彷徨い、僕の下へやって来ることなく、ぱちんと弾けてどこかへ消えた。

暑さで頭が回らない。
ぎらぎらとした太陽が、僕の体力をゆっくりと奪って行く。
僕は山を下りて、近くのコンビニへと向かった。

316 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:07:45.19 ID:Up81u9Qs0

スネオが、いた。

今度は砂漠ではなく、現実の街角で。今、目の前に。

317 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:08:24.14 ID:Up81u9Qs0

駆け寄り、肩を叩く。
元気だったの?心配したんだよ!と声を掛ける。
スネオは申し訳なさそうに笑い、何かを言う。

それだけのことだ。
たったそれだけのことなのに、僕は足を踏み出せずに、いた。

319 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:09:07.66 ID:Up81u9Qs0
スネオは、以前と同じ風貌ではなかった。
目は、麻薬中毒者のようにどんよりと落ち窪み、黒目だけがその存在感を誇示していた。
頬と体はすっかり痩せこけ、元々細身である彼は、だから、針金のようになっていた。

何より驚かされたのは、その身を包む衣服だった。
彼の家は非常に裕福で、スネオの身なりはいつだって小綺麗であった。

それなのに、今のスネオときたら、どうだ。
ぼろぼろになったスニーカー。
泥に汚れたズボン。
継ぎ接ぎだらけの服。
髪も、満足に手入れをしていないのだろう、ひどくぼさぼさである。

(これが、スネオ……?)

321 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:09:39.22 ID:Up81u9Qs0
僕は目の前の光景を、受け入れることができなかった。
ちょっと嫌味だったけど、いつも快活だったスネオ。
自信に満ちあふれ、常に溌剌としていたあの頃。
今の彼に、その頃の影を探すことは、僕には叶わなかった。

322 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:10:38.83 ID:Up81u9Qs0
しばらく茫漠とスネオを見ていた。
コンビニ入ったら彼は、きょろきょろと落ち着きなく辺りを警戒しながら、
店をぐるりと回った。
僕は店の外から、彼に気付かれぬよう、その様子を注意深く窺う。

スネオは缶詰のコーナーの前で足を止める。
目付きが、鋭さを増した。

彼は持っていたぼろぼろの鞄の口を開けると、思うさまに缶詰を鞄に詰め込み始めた。
店員は、全く気付いていなかった。
彼の手つきは非常に手慣れていて、だから僕は、
それが始めての行為……万引きではないことを、知った。

323 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:11:14.33 ID:Up81u9Qs0
およそ30個程の缶詰を鞄に移し替えた頃だろうか。
スネオは鞄を掴むと、すっ、と立ち上がり、足早に店を出た。
そのまま彼は走り、脇目も振らず交差点の方に向かう。

324 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:11:40.00 ID:Up81u9Qs0

ふと、あの日見た夢を思い出す。
砂漠を失踪して行ったスネオを。
追いかけても追いつくこと叶わなかったスネオを。
そして……ぼろぼろと泣きながら笑っていた、スネオを。

気付くと僕も、駆け出していた。

336 :VIPがお送りします :2006/01/23(月) 01:20:44.03 ID:+ykHX3l10
この引き込まれる文章はやばいな
>>1何分でも待つぜ


346 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:43:12.52 ID:Up81u9Qs0
駆けっこではいつもビリだった。
しかし、彼を見失わない程度の脚力は、何とかあった。

スネオが缶詰を抱えたまま、10分程走った頃だろうか。
町の景色は一変していた。
ここは……そう、普段からママや先生が
「近付いてはいけない」
と口を酸っぱくして言っている地域だ。
何でも、貧しい人が多く住む場所とかで、あまり安全な土地ではないらしい。

そんな場所にスネオが何故?とは、もう思わなかった。
様々な疑問が、目の当たりにした幾つかの事実により、答に向かって収斂していく。
とても、悲しい結論に。

348 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:43:58.23 ID:Up81u9Qs0
スネオがふと、歩みを止めた。合わせて僕も立ち止まった。
眼前には、蔦の張り巡らされた一軒の古びた建物、
およそ人が住むに値しないようなぼろぼろの住まいが、そこにはあった。

スネオがゆっくりと階段を上がって行く。
僕も存在を悟られぬ様に、そっと。

ふと、アパートと思しきその建物に備え付けられた看板が目に入った。

『時和荘』

なぜだろう、懐かしくも何とも無いその建物は、
その看板の存在によりいちどきに郷愁を帯びた。
だが今は、その感情の理由を探っている暇はない。追わなければ、スネオを。

351 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:44:41.33 ID:Up81u9Qs0
僕は静かに階段を上がると、一つだけ閉まりゆく扉を見た。

あそこだ。あそこにスネオが。
僕は逸る気持ちを抑え、扉の前に立った。表札は、ない。
代わりに、張り紙がびっしりと……あの日見た張り紙ではない。
いや、ことによると『売家』の方がまだマシだ、と思える様な張り紙が、
ドアの装飾をなしていた。

カネカエセ
ドロボー
サギシ
ジンゾウウッテ カネツクレ

世界が、ゆっくりと形を失っていく。

353 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:45:46.56 ID:Up81u9Qs0
チャイムはなかった。あるはずもなかった。
僕は仕方なしに扉を叩いた。
一度、二度。
返事はない。
三度、四度。
返事は、ない。

僕は一瞬躊躇い、しかし次の瞬間には意を決し、どんどん、と強く扉を叩き、
その向こうにいるはずのスネオに向かって、叫んだ。

「開けてくれ!僕だよ!のび太だよ!!」

刹那、うるせえぞ、という怒号が隣家から飛んだ。
地を這う様な低い声に、僕は思わず言葉を失う。

帰りたい、と思った。
でも帰れない。とも思った。
スネオと会うまでは、会って話をするまでは、僕は帰れない。
そう決意した。

そして僕は、再びドアを叩いて叫んだ。

354 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:46:22.48 ID:Up81u9Qs0
「開けてくれ!頼むよ!会って、話がしたいんだよ!スネオ!スネオ!」
僕は粘り強く語り続けた。
扉は、沈黙を守り続けた。

5分程経った頃だろうか。
扉は、突然に開いた。
最もそれは、隣家の扉だったのだけれど。

355 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:47:22.27 ID:Up81u9Qs0
部屋から男が出て来る。
シャツの上からでも分かるほど隆々とした筋肉。
二の腕から覗く刺青。
目が、怒りを訴えている。
僕は恐怖にすくんだ。

「このガキ……」

一歩、二歩。
男は息を荒げて近寄ってくる。
怖い。
怖い。
逃げたい。
逃げられない。
三歩、四歩。
男があと1mくらいの所にやって来た、その時だった。
目の前の扉が、がちゃり、と開いた。
スネオだ。

しかし彼は、再会の言葉を交わすより早く、
「さっさと入れ!」
と叫んで、僕を室内に引っ張り込んだ。

357 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:51:16.62 ID:BIuIDTsi0
またもやここまでなのですが、明日にして、という意見も散見して、いかがなものか…
と悩んでおります。
確かに明日なら、PCの使える環境におりますので
今よりもスムーズなカキコは期待できます。
ちなみに今は
メールで本文作成

フリメに送ってコピペ
そんな感じです。
なにせキーボードが物故割れてしまい…。
どうしましょう


359 :VIPがお送りします :2006/01/23(月) 01:53:41.30 ID:mDMugsMtO
>>357
明日にしよう!俺はもう限界ポノ。
明日またスレ立ててやってくれ!
非常に楽しませて貰ったよ。今更ながら乙!

367 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 01:57:11.33 ID:BIuIDTsi0
えと、じゃあ明日にいたします。


372 :VIPがお送りします :2006/01/23(月) 01:59:36.56 ID:hyMFVnJR0
今さらだけど>>1乙!
別に続けてもいいよ、俺明日進級がかかったテストあるし全然構わないよ!

375 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 02:01:23.33 ID:BIuIDTsi0
>>372

勉強して下さいwwww
じゃあ残ってたらここに書く、残ってなかったらスレを立てます。

タイトルは『くそみそペニス』にします

377 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 02:02:22.87 ID:BIuIDTsi0
間違えた
『続?スネオの夏』
とか直球ストレートでいきます。


379 :VIPがお送りします :2006/01/23(月) 02:02:42.02 ID:NAnPgWmT0
>>375
ちょwww
おまいさん、思ってたのとキャラ違うぞwwww

380 :VIPがお送りします :2006/01/23(月) 02:03:03.77 ID:mDMugsMtO
>>375
くそみそペニスwwwwwwwwww
おkwwwwwwww
楽しみにしてるぞ。

(中略)

441 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 11:38:00.59 ID:pJF8PzRn0
ちょっと豪快に寝坊して今起きました
テヘ
1時くらいから、書き始めたい、今はそういう風に思っています。

保守ありがとうございます


454 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 12:42:26.11 ID:8HClBXzD0
今パソコンの前に到着
これまでの話を簡易に纏めました
これでスレが落ちても安心ですね^^

http://blog.livedoor.jp/vip9/

じゃあ、書き溜めます


462 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 12:59:30.85 ID:8HClBXzD0
スネオの部屋は、昼間だというのにひどく暗く、どんよりとした空気が漂っていた。
僕を強い力で引っ張りいれたスネオは、しかし、ずんずんと部屋の中に進むと
どっかりと腰を下ろした。
しかし彼は壁の方を向いて何やらゴソゴソするばかりで、何も喋らない。

僕は、何かを喋ろう、と思うのであるが、すっかり変わってしまった彼の
雰囲気に押され、やはり何も喋れずにいた。

僕は手持ち無沙汰に部屋をぐるり、と見渡す。
薄っぺらな布団と、学校の机ほどの大きさのちゃぶ台を除いて、
家財道具は一切ない。ここからも彼の生活の様は窺える。
台所には、食べ終わった缶詰が散乱し、仄かのな腐臭を漂わせている。
荒んだ、生活だ。

僕は少し躊躇ったが、唇を噛みつつ彼に向き直り、聞いた。
「君の……ママとパパは?」
「どうして……学校に来ないんだい?」
「なんで、家を売らなきゃいけなかったの?」
僕はあれこれと、思いつくままに質問を投げかけた。
返事は、ない。

463 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:00:03.73 ID:8HClBXzD0
水を打った様な静けさが二人を支配する。
それでも僕は、粘り強くスネオに語りかけ続けた。

「みんな、心配してたんだよ?スネオ、どうしちゃったんだろう、って……
ジャイアンなんて、すっかり元気なくしちゃってさ……」
「心配……」

スネオが、ぴくり、と反応した。

「そ、そうだよ!皆本当に心配したんだよ?
急に学校にも来なくなっちゃうし……
だから僕だってこうやって」

言葉が、詰まった。
ふと見上げた彼の表情が、おそろしく侮蔑的なものだったからだ。

口を醜く歪めて笑い、しかし目は激しい憎悪に燃えている。
そんな表情だった。
彼の、空白の2ヶ月がどんなものであったのか、
その表情は何よりも雄弁に物語っていた。

464 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:03:26.61 ID:8HClBXzD0
じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ ……

遠くで蝉が鳴いている。

じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ ……

部屋はひどく暑い。

じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ じぃ ……

喉はからからに渇き、僕はごくり、と生唾を飲み込んだ。
スネオは相変わらず、ニヤニヤと笑うばかりで、何も喋ろうとはしない。

「あのさ……」
僕が喋りかけた、その時だった。
ドアが、強い力でどんどんと叩かれる。

「骨川さん!おるんやろうが!さっさと開けえや!」

扉の向こうからは、ひどく乱暴な声が響いた。

466 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:08:05.12 ID:8HClBXzD0
スネオはびくっ、と肩を震わせた。
目には怯えの色が浮かんだが、それも一瞬のことで、
2秒後には先ほどと同じように、なんら感情の色の窺えない表情に戻っていた。

「スネオ……」
喋りかける僕の存在などまるで認識していないかのように、
スネオはすっと立ち上がる。
無表情でドアの方にスタスタと向かうその姿からは、
まるで生気が感じられなかった。

そうだ、先ほどから感じていた違和感はつまり……
彼からは活力というか、生気といった類のものが全く失われていたのだ。
目の前には確かに居るのに、この世には確かに存在しない、幽霊のように

471 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:14:06.93 ID:8HClBXzD0
スネオは無言でドアを開けた。
ドアの向こうには、髪を短く刈り上げた男……おそらくヤクザ、が立っていた。
ヤクザはスネオに目をやり、一瞬部屋の中にいる僕を見ると、
ふう、と言った感じのため息をつく。

「またおらんのかいや……」

憎憎しげに吐き捨てたヤクザ風の男は、胸からタバコを一本取り出し、
火を点けた。
肺いっぱいに満たした煙を豪快に吐き出すと、スネオの方を一瞥して、
少し笑った。

「なんじゃ、今日は友達がきとるんじゃのう。珍しいこともあるもんじゃ」

友達、とは、おそらく僕のことだろう。
彼のその言葉から、スネオは一日の大半を、
いや、ことによると一日の全てをここで、一人で過ごしていることを悟った。
男の言葉にスネオは、何の関心もない、といった態度で虚空をみつめていた。

475 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:19:40.11 ID:8HClBXzD0
何の返事もしないスネオの態度に男は一瞬気色ばんだ様子だったが、
まあええわ、と呟くと地面にタバコを落とし、そのまま踵で揉み消した。

「のう、スネオくん。わしらも好きでこんなことやっとるわけじゃないんじゃ
そりゃあ分かるじゃろう?一番いけんのんは、金を借りたまま返さん
スネオくんのお父さんなんじゃ。分かるじゃろう?
じゃけえのう、スネオくんからも言うといてくれや
『パパ。ママ。早くお金を返して』
って言うてのう」

男はゆっくりと、しかし決して反論は許さない調子で、
スネオに淡々と語りかけた。
言葉面だけ見たら決して乱暴な言葉ではない。
しかし僕は、男の言葉に体の震えが止まらなかった。
怖い。
スネオは、こんな生活を、二ヶ月間も……。
スネオの方を見た。スネオは相変わらず色のない目をしていた。

478 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:25:04.90 ID:8HClBXzD0
「まあ本気で返す気があるんじゃったら」
そう言って男はゴソゴソと懐を探った。
「ここに来い、ちゅうといてくれや」
男はスネオに何やら一枚の紙切れを渡した。

紙切れ。幾つかの光景がフラッシュバックする。
『売家』 とだけ書かれた、あの日の張り紙。
今日、扉の前で見た「金返せ」の張り紙。
そして今、スネオに手渡された、一枚の紙。
紙、紙、紙。
たかだかパルプの成れの果てが、こんなに僕の心を波打たせるなんて。
僕はそう思い、暗澹とした気分に襲われた。

「……まあスネオくんのパパが働くことになる場所は、ぶち寒い場所じゃけえのう
厚着して来い、言うといてくれや」
そう言って男はからからと笑うと、また来るわ、と真顔で呟いて、扉を閉めた。

480 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:33:34.36 ID:8HClBXzD0
男が去った後、部屋は再び重苦しい沈黙に包まれた。
スネオは玄関先にぼうっと立ったまま、動かない。
いや、動かないのではなく、動くのすら面倒くさい、動く意味すらない、
そんな退廃的な雰囲気が漂っていた。
仕方なしに僕はスネオの方に歩み寄る。

「スネオ、その紙は一体……」

そう言って、僕はスネオの握っていた紙に手を差し伸べた。
刹那のことである。
先ほどまでぽつねん、と立っていただけのスネオは、紙に触れようとする僕に気づくと
弾かれたように構えの体勢を取った。
そのまま、もの凄い力で僕の手をはたき、ぱーん、という音だけが部屋に鳴り響いた。

再び沈黙が部屋を支配する。
しかし今度の沈黙は、そう長くは続かなかった。

スネオはひどく太く、そして低い声でこう言った。
「のび太には、関係ない」
その語調には、有無を言わせないものがあった。

482 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:39:26.22 ID:8HClBXzD0
太陽はまた少し西に向かって進んだようだ。
夕日が少し、カーテンの隙間から漏れている。
スネオの横顔が照らされ、赤く染まる。
その赤だけが、彼の激情を表しているかのようだった。

「分かるだろう……」

スネオは不意に呟いた。
僕は突然のことに、えっ、と聞き返した。
その反応にスネオは、また口を醜く歪めて、笑った。

「のび太も分かってるんだろ……パパの会社が倒産したってことくらい。
僕らに残されたのは膨大な借金だけってことくらい」

淡々と語る彼の言葉に、初めて現実を直視させられた。
そのくらいのこと、薄々とは気づいていた。
しかし認めたくはなかった。
言葉にして、形にして整理するのが、嫌だった。
だけど僕が嫌ったそれは、今、当事者自身により、形にされた。

484 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:45:33.38 ID:8HClBXzD0
「どうして……そんなのって……ないよ……」

たまりかねて僕は呟く。
しかし言葉は、続かない。何も、言うことができない。
あれだけ再会を嘱望した友を目の前にして、僕のできることは、絶望的に、皆無だった。

「そんなのってない。そんなのってないよなあ……うん、僕もそう思う。
でもさあ、そんなのってあるんだぜ、のび太。現実に、今、僕らの前に」

スネオはより一層、醜く顔を歪めた。
西日の赤が彼の表情に影を落とし、スネオの狂気を一層強めたように感じた。

遠くでカラスが、かあ、と鳴き、近くでトラックが走りぬけた。
それ以外の音を、僕らは耳にしなかった。

「……お前、何しに来たんだよ」

スネオが、そう呟くまでは。

485 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 13:51:30.54 ID:8HClBXzD0
言われて、思った。

僕は、何をしに来たのだろう。
スネオに会いたかったから?
確かにそれは、ある。
ではもう、用事は終わり?
そんなわけはない。
じゃあ、どうしたいの?
前みたいに、昔みたいに、笑って、走って、一緒に---一緒に?

(僕は、スネオと、一緒に笑えるのだろうか)
今思うと、おそらくそれだけは考えてはいけなかった。

しかし僕は、実際にそう思い、そして微妙な表情の変化は、
はっきりとスネオに伝わったのだ。

「なあ。もう無理だよなあ……僕たちはもう、違うんだもんなあ……」

ひひっ、と上ずった声でスネオは笑い、またすぐ真顔に戻ると、
帰れよ、と息だけの声で呟いた。

489 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:02:38.14 ID:8HClBXzD0
「スネオ、違うんだ、僕はただ……」
「帰れっつってんだよ!!!」

怒号が、部屋に響いた。
同時に額から垂れた汗が、足元に落ちた。
この部屋が、ひどくむし暑いことを、思い出した。

僕らはお互いをまんじりと見つめる。
ドラエもんと諍ったあの日のように、時間の流れはやけに遅い。

チッ チッ チッ チッ

時計の音だけが、虚しく鳴り響いていた。

490 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:03:02.50 ID:8HClBXzD0
「……みんな、離れていったよ」

だしぬけにスネオが喋り始めた。

「パパの友達も、会社の人たちも、みんな離れていった。
パパの仕事が上手くいってる時は、ちやほやちやほやしてさあ。
骨川さん、骨川さん、ってさ。
そりゃあ、楽しかったよ。
でも、会社が潰れて……パパも潰れていく様子を指くわえて見てただけじゃなかった
あちこちに連絡して、いろんな人に助けを求めた。
でもさあ。誰も、何もしてくれないんだよなあ。
今忙しい、とか、電話は取り次げません、とか言ってさ
ある人なんて
『僕はお金を持ってる骨川さんが好きだったのになあ』
なんてハッキリ言いやがって……もう笑うしかないって感じだよな」

僕はスネオの言葉に、ただ静かに耳を傾けた。

499 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:22:27.50 ID:8HClBXzD0
「そんなもんなんだよな、所詮。人と人との繋がりなんてさ…ハカナイよな」

ハカナイ、という言葉が僕の頭の中で「儚い」に繋がるまで、少し時間が掛かった。
それだけ彼の声は平板で、だから余計に、説得力があった。

「……僕がこの2ヶ月間、どんな気持ちで過ごしたか、分かるのか?
何を思って、何を感じてこの部屋にいたのか、のび太、お前に分かるのか?」

分かる、だなんて言えなかった。
言葉にすれば、全てが嘘になるような気がした。
だから僕はまた、何も言えず、スネオの言葉をただ待った。

「……分かるわけないよなあ。のび太の家には、
パパがいて、ママがいて、暖かいご飯があって、
柔らかい布団があって……そして、ドラエもんがいて」

最後の言葉だけ、一層暗い声でスネオは吐き捨てた。

そして僕は気づいた。
彼も期待していたのだ。
ドラエもんに。
彼の道具に。
自分を不遇から救い出してくれることに。

おそらく。きっと。

504 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:28:53.93 ID:8HClBXzD0
「……なんで、今頃来たんだよ」
絞り出すような声で、スネオは言った。

なんで、なぜ、どうして……。
この2ヶ月間で、僕の頭の中を幾つの疑問符が巡ったのだろう。
そしてその幾つが答に辿り着いたのだろう。
僕は今また、その問いに答えられずにいる。

「……本当は、もっと前から心配してたんだ。
君が休み始めて一週間くらいの頃から……」

「聞きたくないね!」
叫びに言葉を遮られた。
思わず怯みそうになる。しかし、ここで言葉を折るわけにはいかない。

「本当なんだよ!本当に……僕は……僕らは……
6月のあの日、君の家に行って、『売家』って張り紙を見つけて、
信じられなくて、ジャイアンと二人して、泣いて……それで……」

それで?僕はふと思った。それで僕は何をした?

506 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:35:27.32 ID:8HClBXzD0
「それで現在に至る、って訳か」

スネオはまた、ひひっ、と上ずった声で笑った。
嫌な笑い方だ。前は、こんな笑い方をする奴じゃなかった。

「知ってて、何もしなかった、って訳か」
スネオは、今度は笑わなかった。
ぎょろっとした黒い目で、僕を覗き込んでくる。

(やめてくれ、そんな目で、僕を、見ないでくれ)
心で叫ぶ。言葉にはならない。してはいけない。
甘んじて受けなければいけない。そんな気が、する。

「……もういいよ。僕はもう、いい」
ふうっ、とため息をつきながらスネオはそう言った。
しかしその言葉は僕を許したことを意味したのでなく、
僕とスネオとを決定的に別つものだった。

508 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:40:42.93 ID:8HClBXzD0
「もう僕は何にも期待しないし、誰も信じない。
一人で生きるんだ。
のび太も見たんだろう?僕が……」
スネオは言葉を途中で切り、缶詰でぱんぱんに膨れ上がった鞄を一瞥する。

一人で生きていく……

彼の過ごした2ヶ月間は、彼をしてそう思わしめるに十分なものだった。
しかし、その結論を遵守するために選んだ手段が万引きであるならば……
悲しすぎる。あまりにも。

「……そういうことさ。まあ新しい玩具も漫画も手に入らなくなった今の僕に、
もとより人が寄ってくるとも思えないけどね」
「そんなことはない!!」
たまりかねて、僕は声を荒げた。

510 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:46:34.43 ID:8HClBXzD0
「そんなこと、あるもんか……」

視界が、霞む。スネオの顔が、歪む。
彼の意思ではなく、今度は僕の涙のせいで。

「確かに君には玩具も、漫画もないかもしれない。
でもこれまで過ごした僕らの時間は、今も残ってる。
少なくとも、僕の中には。
君と行ったコーヤコーヤ星を、僕は忘れない。
君と作った雲の王国を、僕は覚えている。
君と過ごした海底での時間は、まだ胸に残っている。
残っているんだ……。」

最後は、掠れた声で、言った。
スネオは、何も言わない。

そしてこの日最後の沈黙が、僕らの周りを包んだ。

513 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:52:29.80 ID:8HClBXzD0
「……じゃあ、助けてくれよ」

スネオもまた、泣いていた。
泣きながら、最後の言葉を、呟き始めた。

「この、最悪の現実から、僕を助けてくれよ!
できるんだろ!ドラエもんの力を借りれば!
僕の生活を!平和だったあの頃に!戻すことくらいできるんだろ!
してくれよ!今すぐに戻してくれよ!
なあのび太!なあ!」

泣き喚きながら、スネオは叫んだ。
彼は、この日初めて、自分の感情を露にした。
それも、もっとも見たくない形で。

「……できないんだろ」
スネオはぽつりと呟いた。
その目はもう涙に濡れてはおらず、また、絶望に彩られた目つきに変わっていた。
「……帰ってくれ。そしてもう、姿は見せないでくれ」

僕は何も言えず、何も言葉を掛けることができず、虚脱したような気分で、家に帰った。

515 :1 ◆vC.kHTi4RE :2006/01/23(月) 14:57:37.86 ID:8HClBXzD0
(前半終わり)




その3へ続く

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【2006/01/23 19:09】 | 〆(・ω・ ) ヨミモノ | トラックバック(0) | コメント(0) |
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