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ξ゚?゚)ξが身篭ったようです その12
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18 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:50:21.74 ID:b3PfiDBG0
シャキンの言葉にスタジオの中が静まり返る。
時計が時を刻む音さえ大きく感じられるほどの静寂。
それは突然すぎるキタからの別れの音だろうか。

( ゚∀゚) 「おい・・・本当なのかよ」

(`・ω・´) 「ああ。今キタの両親から電話があった。
        今夜通夜、明日が葬儀だそうだ」

( ゚∀゚) 「明日のライヴはどうすんだ」

(`・ω・´) 「それは予定通りやるよ」

( ^ω^)「そんな・・・キタ・・・」

皆ショックの余り、練習どころではなくなってしまった。

(`・ω・´) 「ここに居てもしょうがない。みんな通夜は7時から鮫島斎場である」

( ゚∀゚) 「わかった。じゃあそこでな」

(`・ω・´) 「香典はVIPPERで包むから各自5000円持参で」

( ^ω^)「了解ですお」

20 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:51:19.43 ID:b3PfiDBG0
ブーンは家に飛んで帰り、箪笥の奥から喪服を引っ張り出してきた。
18の時にじいちゃんの葬式で着て以来だ。
少し袖が短いような気がしたが、そんなに気にならないだろうと自分に言い聞かせた。

ξ゚?゚)ξ「どうしたの?喪服なんか着ちゃって」

( ^ω^)「今からお通夜なんだお」

ξ゚?゚)ξ「誰か亡くなったの?」

( ^ω^)「うんだお・・・キタちゃんって言ってVIPPERのローディの子だお」

ξ゚?゚)ξ「キタちゃん」

ツンはハッと思い出した。
ツンがジョルジュに誘われたあの時、喫茶店に迎えに来てくれたあの子だ。

22 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:52:22.79 ID:b3PfiDBG0
ξ゚?゚)ξ「あの子が・・・?」

( ^ω^)「あれ、ツンあったことがあるのかお」

ξ゚?゚)ξ「ライヴのときにちょっと」

( ^ω^)「そうかお。ツンも行くかお?」

ξ゚?゚)ξ「私は・・・やめておくわ。私の分もお別れを言っておいて」

一般的に妊婦は葬儀には出ないほうがいい。
おめでたい人が葬儀や通夜といった場へ出るとお互いが気をつかうし、
何より長時間同じ姿勢で居ることは母体・胎児への負担にもなる。
余程近い親族の葬儀には顔を出す場合があるが、その際帯や腹巻に
手鏡を外へ向けて入れる。これは一種の「魔よけ・お祓い」の意味があるのだ。

23 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:53:16.47 ID:b3PfiDBG0
ブーンが7時より少し前に鮫島葬祭場に着くと、
会場の前にはもう既に人が沢山集まっておりブーンはジョルジュ達と合流する為に
辺りをきょろきょろと見回してみた。
弔問客の中にはブーン達以外にもミュージシャンが居るようだ。
黒い人ごみの中にちらほらと赤や金といった派手な毛色が目立った。

( ゚∀゚) 「ブーン、着いてたのか」

( ^ω^)「今来たとこですお」

(`・ω・´) 「なあ、いまい見なかったか?」

( ^ω^)「イヤ、逢ってないですお・・・」

( ゚∀゚) 「遅れてくるんじゃねーか?あいつ家遠いし」

(`・ω・´) 「そうか。それじゃあ先に中に入っとくか?」

( ゚∀゚) 「そうするか。」

24 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:54:04.47 ID:b3PfiDBG0
3人は順番に記帳を済ませ、ずらりと並んだ焼香待ちの列の後ろに着いた。
悲しんでいる暇など無いと言っているかのように淡々と通夜は進められていく。
ブーンが前を見るとそこにはにっこり笑ったキタの遺影が沢山の緑の葉に
囲まれていた。

( ^ω^)「あれ、菊の花じゃないのかお」

(`・ω・´) 「日蓮宗はあーいう葉っぱなんだってよ」

冠婚葬祭に全く疎いブーンはひとつかしこくなった気がした。

(´し`VP)「悪い、遅れた」

いまいが息を切らして入ってきた。

(`・ω・´) 「おう、お疲れ」

( ゚∀゚) 「何してたんだよ。まったく」

いまいは胸ポケットから小さなメモ帳を取り出した。
胸ポケットに入るくらいの、小さな小さなメモ帳。

25 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:54:30.57 ID:b3PfiDBG0
( ^ω^)「それ、なんですかお」

(´し`VP)「ベースに関する基礎知識と簡単なテクニック。
       急いでメモしたから字が汚いけど、キタなら頑張って読んでくれるだろ」

( ^ω^)「・・・僕にも見せてくださいお」

パラパラとめくると、そこには細かい字で、時折絵も交えながら
ベースに関するあらゆる情報が書かれてあった。

( ^ω^)「いまいさん、ペン貸して下さいお」

ブーンの脳裏にいつかのキタの姿が蘇った。
機材を一生懸命に眺めるキタ。
汗だくになりながら機材を運んでいたキタ。
ブーン達が練習中もバンドの裏方として頑張ってきた、キタ。
決してメンバーの前で泣き言を言わず仕事をこなしたキタ。

27 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/27(木) 23:55:17.12 ID:b3PfiDBG0
(n‘∀‘)η「いまいさんのアンプのメモリのメモを取ってるんです。
        こうすると後が楽でしょ。自分の勉強にもなりますし」

( ^ω^)「キタちゃん、ベースやってるのかお」

(n‘∀‘)η「はい、ブーンさんのもメモとらせてくださいね」

( ^ω^)「僕はライブの度に違うから参考にならないと思うお?w」

(n‘∀‘)η「そうなんですかwwでも一応、勉強として」


ブーンは震える手で自分のアンプのメモリを手帳の最後のページに書き込んだ。
それがブーンがキタに伝える事の出来る精一杯のことだった。

( ^ω^)「ありがとうございましたお。
       勝手に書いちゃってごめんなさいですお」

(´し`VP)「いいんだ。キタも喜ぶだろう。」

( ゚∀゚) 「葬式は出られないしな・・・」

皮肉にも明日はライヴが入っていて、4人はキタの葬儀に出ることは出来ない。
キタは楽器の演奏こそしないが今までメンバー同然一緒に頑張ってきた仲間だ。
四人全員、悔しさと悲しさで砂を噛む思いだった。

32 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:06:20.17 ID:Rpu67zk90
相変わらず長蛇の列がキタの祭壇の前に出来ている。
皆肩を震わせ、キタとの別れを惜しんでいるようだった。

('A`)「あっ、ブーンさん!!!」

( ^ω^)「ドクオ君じゃないかお」

先に焼香を済ませたドクオがブーンに近寄ってきた。
ドクオはブーンがVIPPERに加入して一番最初に一緒にライヴをしたバンドの
ギタリストであり、ブーンの大ファンだった。

( ^ω^)「きてくれてありがとうだお」

('A`)「いえ、とんでもないっす。キタさんには俺らも世話になりましたから」

( ^ω^)「きっとキタも喜んでると思うお。
         そういえば最近見ないけどバンドのほうはどうだお?」

('A`)「僕、クビになっちゃいました。
    きめぇwwwwって言われて。」

( ^ω^)「ドクオ君ギターうまいのに勿体無いお」

(*'∀`)「そんなん言ってくれるのブーンさんだけっすよ」

33 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:07:16.60 ID:Rpu67zk90
ドクオは可哀相な事にきっと神様が悪戯で創ったんだろうというような
とても気持ちの悪い顔をしていたが、ギターの腕は息を呑むほどだった。
まだまだ音としては不安定だが繊細で一つ一つの音を確実に鳴らすことが出来る。

( ^ω^)「今までキタによくしてくれてありがとうだお」

('A`)「いえ、こちらこそ。じゃ」

ドクオは会場の外へ消えていった。
よくよく注意して周りを見渡せば、カラフルな毛色のバンドマン達は
全てVIPPERにかかわりのある人たちだった。
皆キタの不幸を聞き、別れを言いに来たのだ。
そのぐらいキタは皆に愛されていた。

( ^ω^)「キタ・・・」

ブーンは改めてキタの存在の大きさを知った。

34 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:10:38.53 ID:Rpu67zk90
段々列が短くなってゆく。
背筋がしゃんとするようなあの匂いが近づいてくる。
誰かが洟をすする音。
こらえきれない嗚咽。
耐えることが難しいほど重たい空気。
額の中のキタは眩しいほどに笑っている。
いつもと同じように。

( ^ω^)「・・・」

いよいよブーンが焼香する番がやってきた。
キタの家族が起立、そして礼をしてくれる。
ブーンは口から心臓が飛び出しそうになるのを抑えながら
ゆっくりとキタの棺の傍へ歩いていった。

35 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:16:54.17 ID:Rpu67zk90
棺の中のキタはまるで眠っているようだった。
声をかければ慌てて起きてしまいそうなぐらい、
本当にぐっすり眠っているようでブーンはキタの死を
受け入れる事が出来なかった。

( ^ω^)「・・・キタ、起きるお」

ブーンはぎこちないしぐさで焼香をする。
煙がブーンの目を覆った。

「事故ですって」
「居眠り運転していた大型トラックに巻き込まれて・・・」
「可哀相に、まだ若いのに」
「顔の形があるだけまだ救いかしら」

どこかでお喋りなおばさんたちがキタの話をしている。
ブーンが改めてキタの顔を覗き込むと、
キタの手や頬に擦り傷が見えた。

( ^ω^)「痛かったお、キタ・・・」

ブーンは擦り傷で真っ赤になっているキタの掌を見つめた。

36 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:19:39.82 ID:Rpu67zk90
ブーンが焼香を終え、外に出て煙草を吸っているといまいが出てきた。
いまいはブーンに気付くと自身も煙草を取り出し、ふかしてみせる。

(´し`VP)「なんつーか、あれだ」

( ^ω^)「なんですかお」

(´し`VP)「虚無だ」

( ^ω^)「難しい言葉ですお」

(´し`VP)「まーな」

2人は一本ずつ煙草を吸い終わると、どちらからともなく家路へ着いた。

43 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:37:26.92 ID:Rpu67zk90
次の日、空は雲ひとつなく晴れ渡り、冷たい空気がぴんと張り詰め
四人の気持ちををしゃんと引き締めた。

(n‘∀‘)η「皆さん、今日もがんばりましょうね!」

キタがそう励ましてくれているかのように。

( ゚∀゚) 「よっしゃ、今日はキタの為に歌う」

(`・ω・´) 「一打入魂だ」

( ^ω^)「僕もですお」

(´し`VP)「うむ」

(`・ω・´) 「このライブが終わればツアーまでないからな」

( ゚∀゚) 「キタが安心して成仏できるようにしっかりしねーとな」

(´し`VP)「レクイエムか」

( ^ω^)「いやにうるさいレクイエムですおwww」

四人は笑いながら肩を叩きあい、ステージへと上がった。
その日のライヴは端から見ればいつもと変わらない、
最高のステージだったのだが、四人の音がこれまでになく
優しく絡み合い、ホール全体を包んでいた。

44 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:38:14.28 ID:Rpu67zk90
ξ゚?゚)ξ「もうすぐ八月かー。いよいよ予定日間近ね」

ツンは母子手帳とにらめっこしながらつぶやいた。
まんまるに膨らんだお腹はもうおへそがなくなっていて、
外側へ外側へとめくれてまるであんまんの様な見た目になっていた。

ブーンはバイトしていた建設現場で契約社員へと昇格し、
なんとか生活も軌道に乗ってきた所だった。
しかし仕事のため以前のようにバンド漬けの生活を送ることが困難になり、
次第に楽器とも疎遠になっていった。

( ^ω^)「ただいまだお」

ξ゚?゚)ξ「おかえりなさい。今夜出発だったっけ?」

( ^ω^)「うん、3時間後に迎えに来るらしいお」

ξ゚?゚)ξ「準備手伝おうか」

( ^ω^)「いいお。妊婦さんはゆっくりしてるといいお」

ブーンは汚れた顔を洗おうともせずせっせと荷造りを済ませ、
練習を始めた。

45 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/28(金) 00:39:14.77 ID:Rpu67zk90
今回のツアーは全国18箇所を回る長丁場だ。
人気バンドといえど貧乏なのでツアー中は健康ランドに泊まったり、
車の中で寝たり、最悪ライヴハウスの片隅を借りて寝たりする。
今回はキタの代わりにドクオがローディとしてツアーに同行する事になった。

( ^ω^)「じゃあ、行って来るお。くれぐれも身体を大事にだお。」

ξ゚?゚)ξ「ええ、携帯電話は一応いつでも通じるようにしておいてね」

( ^ω^)「勿論だお。なにかあったらすぐ連絡くれお」

ξ゚?゚)ξ「解ったわ。楽しんできてね」

ツンは少し寂しそうに手を振った。

173 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:36:05.04 ID:9VOX4NOZ0
博多から始まって小倉、広島、岡山、高知、新潟、福島、宮城、北海道へと北上し、
後半戦は群馬、東京、埼玉、名古屋、そしてツアーファイナルの大阪を回る
VIPPERの今回のツアーはかなり大きく、メンバー全員がこれだけの土地を
一気に回るのはこれが初めてだ。
皆最初は遠足に行くようなノリでわいわいとはしゃいでいたが、
5箇所目の新潟を過ぎた辺りで体力の限界が近づいてきた。

( ^ω^)「ふう、なんだか全身が痛いですおー」

(´し`VP)「エコノミー症候群にならないようによくほぐしたりしないとな」

( ゚∀゚) 「くそう、機材車狭いぜ」

('A`)「次のサービスエリアは温泉あるらしいっすよ」

(`・ω・´) 「助かるぜ!」

174 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:36:38.72 ID:9VOX4NOZ0
シャキンといまい、そしてジョルジュは刺青を入れているため、なかなか
街の銭湯には入ることが出来ない。こういったサービスエリアの温泉に
刺青を隠しつつ入るか、またはライヴハウス備え付けのシャワー(滅多にないのだが)
でしか湯浴みができないのだ。

(´し`VP)「シャキン、今夜あたりホテルにでも泊まらないか?」

(`・ω・´) 「うーん、そうだな・・・。体調を壊す前にそうするか」

( ゚∀゚) 「やった、今日はベッドで寝れる!」

(`・ω・´) 「でも雑魚部屋だよ」

( ^ω^)「そ、それでもいいですお。足を伸ばして寝れるなら・・・」

175 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:37:16.09 ID:9VOX4NOZ0
基本的にライヴの出演交渉はVIPPERから申し込む事が多い。
そうすれば殆どこちらの理想どおりのスケジュールが組めるのだ。
ライヴをする時に課せられるのが「チケットノルマ」というもので、
色々なやり方があるが、ライヴハウス側から〇〇枚は売って欲しいとノルマを出される。
その枚数に届かなければノルマまでの差額を払わなければいけないし、
ノルマ以上のチケットを売ることが出来た場合、チャージバックが発生する。
これは店によって半額だったり30%だったり様々。
そしてツアー先ではノルマを課せられることはまずない。
枚数が沢山売れれば売れるほどチャージバックは発生するが、
少ない枚数や売れなかった場合は出ない。
だが大体ツアー先のライヴハウスの店長が「交通費」と称していくらかくれる事がある。

シャキンはツアーで出たギャラ(チャージバック)をツアー費に当てていて、
そこから宿泊代やガソリン代を捻出している。
ギャラ貯金が溜まれば溜まるほど優雅なツアーライフが送れる、とこういうわけだ。

(`・ω・´) 「そのかわり今日泊まればまた向こう5箇所は車でがんばろうね」

この言葉を聞いて残りの4人は少しだけうんざりしたが、
背に腹はかえられぬ、がんばろうじゃないかと意志を固めるのだった。

176 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:38:03.32 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「ツンさん、今日から37週ね。
       先週みた感じでは赤ちゃんの体重も申し分ないし、もういつ出てきてもいいわね。」

ξ゚?゚)ξ「そうなんですか!?てっきり予定日より前は早産になるかと思ってたのに・・・」

妊娠10ヶ月、37週目を過ぎれば胎児に外界で生きていく為の機能は
全て備わっているといわれている。37~42週の間に生まれれば「正期産」、42週を過ぎれば
「過期産」と言われる。一般的に過期産を越せば胎盤の機能が落ちると言われているため、
帝王切開をしたり、誘発分娩(陣痛促進剤を投与したり)したりする病院が多い。
ツンは妊娠37週目に差し掛かり、妊娠生活もいよいよ佳境に入ってきたところだ。

(*‘ω‘ *)「おしるしなんかはないかしら?」

おしるしというのは、胎児が出産を迎えるために下の方に降りてくる時に
胎児の頭と卵膜(胎児を包む薄い膜)が擦れ、出血する。
それが下着についたり、排泄の時に出てきたりする、これがおしるしだ。
おしるしがあると出産の兆候、もうすぐ生まれますよというサインのひとつである。

ξ゚?゚)ξ「いえ、ないです」

177 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:38:46.04 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「そう。でも油断しないでね。いきなり破水したり、陣痛が始まったりするから。
       破水したり陣痛が起こった疑いがあるときは迷わず病院に連絡して」

先生はツンのはちきれそうなおなかに超音波の機械を当てながら話し続けた。
画面に映るツンの赤ちゃんはとても元気に動き回っていて、
時折足の裏を見せたり指をしゃぶったりしながらその可愛い姿を見せてくれていた。

(*‘ω‘ *)「うーん、でも子宮が大分下がってきてるからお産は近いかもしれないわね。
       最近ご飯良く食べられるでしょう?」

ξ゚?゚)ξ「そういえば・・・」

胎児が降りてくるという事は今まで圧迫されていた胃が開放されるという事になる。
ツンは先生の言うとおり最近食欲も増し、以前より沢山食べるようになっていた。

(*‘ω‘ *)「お産は体力勝負だからね、沢山食べてね。
       食べ過ぎて太りすぎても困るけどww」

ξ゚?゚)ξ「は、はい、気をつけます」

(*‘ω‘ *)「赤ちゃんの買い物とかも済ませておいてね」

ξ゚?゚)ξ「そうか、赤ちゃんのもの・・・」

ツンはすっかりわすれていた。

178 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:39:51.59 ID:9VOX4NOZ0
そういえばブーンがツアーに出る前、ツンに一枚の封筒を託していった。
中身は一万円札が10枚。
ブーンが切り詰めに切り詰めたお金で捻出した赤ちゃんのための買い物資金だった。

ξ゚?゚)ξ「ブーン・・・」

ツンはそのお金を使うことを躊躇った。
しかしブーンが赤ちゃんのためを思って切り詰めてくれたお金なのだから
赤ちゃんのために使おうと買い物に出かけた。

出産後1ヶ月は母体回復のためなるべく安静にしている方がいい。
昔の言い伝えで「産後は水を触るな」「産後は本を読むな」などがあるが、
全て母体の回復を促すためのもの。しかし実際産後すぐに働いたりすると
歳をとってから身体にガタがきたり、ひどい人は寝たきりになってしまうこともある
というのだから驚きだ。
勿論買い物なども行けないし、行かないほうがいい。
家事すらしないほうがいいのだ。
里帰り出産(産後実家に世話になる:実家に戻っての出産)
の目的は大体それなのだが。

179 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:40:28.31 ID:9VOX4NOZ0
ξ゚?゚)ξ「うわ、赤ちゃんの服ってこんなに小さいのね」

ツンが手に取ったのはサイズ表示が50の肌着だった。
生まれたての赤ちゃんのサイズは約50cm、3kg程だ。(もちろん個人差は大きいが)
その赤ちゃんが着ても50の肌着はぶかぶかである。

ξ゚?゚)ξ「えーと、綿棒と、おむつと、ガーゼと・・・哺乳瓶は病院がくれるっていってたわね」

最近の産婦人科では退院時になにかプレゼントをくれるところが多い。
それはおむつだったり、哺乳瓶だったり、出産を録画したDVDだったり様々だ。

ツンはひととおり赤ちゃんのものを購入した後、スニーカーショップへ向かった。

ξ゚?゚)ξ「ブーンの靴随分古いものね」

ツンは黒の皮で出来たナイ糞のスニーカーを買った。
プレゼント用にと青いリボンをかけてもらい、嬉しそうにその箱を抱えて家に戻ったのだった。

184 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:56:36.79 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「お、ドクオ君今暇かお?」

('A`)「はい、大丈夫です」

( ^ω^)「悪いけど僕のギターの弦張り替えておいて欲しいんだお」

('A`)「了解っす」

ドクオのローディとしての働きっぷりは気持ちがいいくらい良かった。
キタの様に細やかな気配りは今ひとつといったところだが、
仕事の速さと丁寧さは見事なものだった。
ブーンはドクオに慕われ、色々とギターの話をしたりしていた。
いまいがキタにそうされていたように。

( ^ω^)「別に僕はうほっじゃないお」

('A`)「・・・そっすか」

ドクオは心なしかしょげているようだったが
ブーンは見ないふりをしてその場を後にした。

185 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:57:00.40 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「おいすー。ドクオくん、どう?出来てる?」

('A`)「はい、ばっちりっす!」

( ^ω^)「おお、本当だお!綺麗にやってくれてありがとうだお」

(*'∀`)「い、いえ、エヘヘ・・・。俺、本当にブーンさんにあこがれてるんです」

(*^ω^)「ちょ、照れるお」

(*'∀`)「本当っすよ。ブーンさんに逢わなかったら俺バンド辞めてたっすもん。
     いやああの時のステージは凄かったなあ」

( ^ω^)「そうかおwww」

(*'∀`)「本当、憧れっすよ。VIPPPERも、ブーンさんも」

( ^ω^)「ドクオ君本当にバンド好きなんだお」

(*'∀`)「えへへ、はい。新曲も聴いてるうちに覚えちゃいました。ほら」

そういってドクオはブーンのギターでちょろりと弾いてみせる。
なかなかの腕前だ。ブーンは感心した。

188 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 00:57:17.75 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「ライヴで聞いただけでここまで弾けるなんて
        ドクオ君凄いお」

(*'∀`)「好きっすから」

( ^ω^)「・・・僕の代わりにVIPPERでギター弾けばいいのに」

('A`)「え?」

( ^ω^)「なんでもないお。冗談だお、冗談」

('A`)「なんですか?気になるなあw
      それより明日はツアーファイナルじゃないですか。頑張って下さいね!」

( ^ω^)「もうファイナルかお。早いもんだお」

('A`)「ね、俺もなんだか寂しいですよ・・・あれ、ブーンさん携帯鳴ってませんか?」

( ^ω^)「本当だお。あと5分で本番なのに誰だお?」

('A`)「大変ですねww」

( ^ω^)「ツンだお!!!!!」

190 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 01:04:24.06 ID:9VOX4NOZ0
ツンは泣きながらブーンに電話をした。
頭の中がぐちゃぐちゃで、もう何をしたらいいのかわからなかったのだ。

ξ;?;)ξ「うう、ブーン、ブーン・・・」

( ^ω^)「もしもし!!!111!ツン!!?どうしたお!!!」

ξ;?;)ξ「ブーン・・・ブーン!うう・・・」

パニック状態で立ちすくむツンの足元には大きな水溜りが出来ていた。
破水したのだ。

( ^ω^)「落ち着くお!どうしたお?」

ξ;?;)ξ「み、水が・・・水、水、」

( ^ω^)「水?水こぼしちゃったのかお?」

ξ;?;)ξ「水が、水、水」

( ^ω^)「ツン!!!深呼吸だお!!」

191 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 01:04:54.01 ID:9VOX4NOZ0
ツンは言われるとおりに深呼吸をした。

ξ;?;)ξ「み、水が・・・破水したの・・・赤ちゃん、生まれちゃう」

(;^ω^)「なんだって!!!????」


('A`)「ブーンさん、SEかかりますよ、本番ですよ。」

(;^ω^)「マズイお、今行く!」

ξ;?;)ξ「ブーン!ブーン・・・」

( ^ω^)「いいかツン、救急車を呼ぶんだお!!!ライブ終わったらすぐに行くお!!」

ブーンは電話を切るとはやるきもちを抑えながらステージへと向かった。

209 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:00:38.84 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「いよいよなのかお・・・」

ブーンはステージに立っている間中集中できずに居た。
子供の事も勿論だが、何より混乱していたツンが気がかりでならなかった。
大丈夫だろうか。
救急車は呼べたのだろうか。
目の前で自分の方に手を伸ばし何か絶叫している観客の姿など
今のブーンの目には映っていなかった。

( ゚∀゚) 「えー、みんなありがとう。
       今日が長かったツアーのファイナルです」

曲と曲の合間にジョルジュが話し始めた。
ブーンは後ろを向いて水を飲む。
やたら喉が渇く。飲んでも飲んでも、まだ喉が乾いている。

210 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:01:06.71 ID:9VOX4NOZ0
(`・ω・´) 「おい、ブーンどうした」

シャキンが小声で話しかけた。

( ^ω^)「お」

(`・ω・´) 「お前飛ばしまくってるからさ」

( ^ω^)「・・・コドモが生まれるんですお」

(`・ω・´) 「なんだって!?」

( ^ω^)「すいませんがこのライブが終わったあとすぐ帰らせてくだしあ」

(`・ω・´) 「送ってくよ。何処の病院だ?」

( ^ω^)「ぽっぽ産婦人科ですお」

(`・ω・´) 「しらねーな・・・道教えてくれよな」

( ^ω^)「はいお」

211 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:01:23.18 ID:9VOX4NOZ0
ライヴが終わるとVIPPER全員(+ドクオ)が機材車に飛び乗り、
ぽっぽ産婦人科に居るツンの元へと急いだ。

(´し`VP)「まじかよ、お前いよいよ父ちゃんになんだな」

( ゚∀゚) 「大丈夫か?w」

( ^ω^)「ちょ、からかわないでくださいお」

(`・ω・´) 「飛ばすぜー、しっかりつかまってろよ!」

( ゚∀゚) 「ヒャッホーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

ジョルジュは窓を全開にすると窓から身を乗り出して叫んだ。
夜の風が車内を満たしていく。
ブーンは早くなる鼓動を胸に抱え、これから起こるであろう奇跡にわくわくしていた。

212 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:01:49.00 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「破水してるわね。陣痛はどうかしら?」

ξ゚?゚)ξ「まだ、そんなに痛くないですが・・・生理痛みたいなのは少し」

(*‘ω‘ *)「定期的にきてる?」

ξ゚?゚)ξ「いえ、ワカラナイぐらいの痛みなので・・・」

(*‘ω‘ *)「これから強くなるかもしれないわね。少し様子を見ましょうか」

ξ゚?゚)ξ「はい」

(*‘ω‘ *)「我慢できなくなったらナースコールしてね」

ツンはベッドの上に一人取り残されてしまった。

ξ゚?゚)ξ「まだ全然痛くないのに・・・。本当に今日生まれるのかしら」

ツンはあまりの痛みのなさにびっくりしていた。

ξ゚?゚)ξ「トイレに行こう」

と、立ち上がった瞬間、腰をバットで殴られたような痛みが走った。

ξ゚?゚)ξ「・・・う」

213 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:02:14.06 ID:9VOX4NOZ0
ツンは余りの痛みにしゃがみこんでしまった。
膝に自然に力が入る。がくがく震えてしまう。
おなかというよりも腰がとても痛い。これが陣痛なのだろうか。

ξ゚?゚)ξ「おさまったわ・・・」

暫くするとその痛みは治まった。
何事もなかったように痛みの波は引き、また普通に立ち上がれるほどに
いつも通りの体調に戻る。

ξ゚?゚)ξ「何かしら、今の・・・う」

また腰が痛む。
やはり陣痛が着いたのだ。
ツンは四つんばいになり、枕にしがみついた。
痛い→痛くない→痛い→痛くない
この感覚が定期的に、そして短くなってきたらいよいよ本陣痛である。
病院に搬送されて5時間、やっと本番がきたようだ。

214 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:02:31.16 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「あらあら、痛そうね。可哀相に。
         子宮口の開きを見ましょうか。」

先生が指を入れて子宮の開きを確認する。

ξ゚?゚)ξ「痛い!痛いです!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


(*‘ω‘ *)「これから子供生む人が何言ってるの!
          うーん、7cmってとこかしらね。朝には生まれるかな」

ξ゚?゚)ξ「これが朝まで・・・」


(*‘ω‘ *)「また様子見に来るわね」

ツンは気が遠くなりそうだった。

215 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:02:51.98 ID:9VOX4NOZ0
(`・ω・´) 「畜生、混んでやがる」

(´し`VP)「べったりだね・・・これじゃあこの通り抜けるのだけで1時間はかかる」

( ゚∀゚) 「くそー、電車もねえしな」

( ^ω^)「困りましたお」

('A`)「奥さん、大丈夫ですかね」

ジョルジュは物凄い勢いでドクオを睨んだ。
「空気嫁」とでも言うかのように。

( ^ω^)「しょうがないですお」

ブーンは膝の上で組んだ手を忙しなく動かしながら応えた。

216 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:03:20.08 ID:9VOX4NOZ0
ξx?x)ξ「もう嫌!もう生まない!」

あれから2時間、余りの痛さにツンは取り乱していた。
泣きじゃくるツンをぽっぽ先生は優しく励まし続ける。

(*‘ω‘ *)「赤ちゃんも頑張ってるのよ!!!息を止めないで! 
          赤ちゃんに酸素がいかないわ!」

ξx?x)ξ「赤ちゃんなんかいらない!もう生まないいぃぃっぃ!!!!!」

可哀相にツンは陣痛はとても強いのがついていたのだが
いかんせん子宮口が開かないのでなかなかいきめずにいるのだ。

(*‘ω‘ *)「そんなこといわないで。頑張りましょうね。
       じゃあ子宮口を見ますからね」

ξx?x)ξ「切って!もう切って出してえぇぇぇ!!!!!!!!」

217 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:03:44.03 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「あ!!!凄い!」

ξx?x)ξ「もういや!もういや!!」

(*‘ω‘ *)「ツンさん10cmだよ!全開だよ!!赤ちゃん生まれるよ!!」

ξ゚?゚)ξ「!!」

(*‘ω‘ *)「072号室の内藤ツンさん、全開です!分娩室入ります!」

先生が携帯電話でそう告げると、ツンは車椅子に乗せられ分娩室へと運ばれていった。


分娩室に入ると、広い部屋の真中に内診台と似た分娩台が置かれ、
壁には水槽がはめ込まれ熱帯魚が泳いでいた。
ぽっぽ先生を含め3人の助産師が分娩の準備を進めていた。

218 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 02:04:00.95 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「痛いのの波が来たら深呼吸を2回して、
           それから息を止めて声を出さずにいきんで下さい」

ξ゚?゚)ξ「は、はい」

ツンは言われたとおりにいきんでみる。
いきんだ後、骨盤を両側から鷲づかみにされ、外側にぐいぐい広げられている感覚に襲われた。
気のせいかもしれないが、ミシミシという音が聞こえる気がする。
腰の骨が曲がってはいけない方向に曲がってしまいそうなぐらい、痛い。

(*‘ω‘ *)「上手よ!その調子!」

ツンはありったけの力を込めて今ひとつの命をこの世に送り出そうとしていた。

346 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:27:59.61 ID:9VOX4NOZ0
一方ブーン達はまだ渋滞に巻き込まれたままで居た。
次第に皆の苛立ちが募り、車内にはなんともいえない尖った空気が充満している。

(`・ω・´) 「クソ、このままじゃ間にあわねえ」

シャキンはハンドルの上で手をトントンさせながら咥え煙草で呟いた。

( ゚∀゚) 「どこのどいつだよ渋滞おこしてんのはよ」

ジョルジュも助手席でダッシュボードに足を乗せて貧乏ゆすりをしている。
話し方から察するに、こちらも苛立ちが最高潮にキているようだ。

(´し`VP)「・・・」

いつもは温厚ないまいさえもこの時ばかりは別人のようだった。

( ^ω^)「ちょ、皆さんそんなに焦らないで下さいお」

ブーンは異常なほどヒートアップするメンバーを見て少しだけ申し訳ない気持ちになった。

347 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:28:16.38 ID:9VOX4NOZ0
( ゚∀゚) 「焦るなってお前、こりゃ人生の一大イベントだろうがよ!」

(`・ω・´) 「さっさと行けよな・・・」

('A`)「・・・あの、僕運転します。ぽっぽ産婦人科ですよね」

(`・ω・´) 「え?」

('A`)「抜け道知ってますんで」

( ^ω^)「ほ、本当かお」

ブーンにはドクオから後光がさしてみえた。

('A`)「しっかりつかまっててくださいね」

(`・ω・´)
(´し`VP)「おk」
( ゚∀゚) 
( ^ω^)

ドクオはハンドルを握ると物凄い勢いで無理やりUターンをした。

348 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:28:42.07 ID:9VOX4NOZ0
(`・ω・´) 「Uターンかよ!」

('A`)「一本道戻ればいい道があるんですよ」

ドクオは人が変わったかのように荒っぽい運転で車と車の間を抜けていく。
一本道を戻ると其処は民家の間にかろうじて通っているような小さな細い道だった。

(´し`VP)「おい、大丈夫なのか」

('A`)「余裕っす」

ドクオはけたたましい音を鳴らしながらハンドルを切っていく。

( ^ω^)「ちょ、90kmってドクオ出しすぎだお!」

('A`)「余裕っす」

350 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:28:58.63 ID:9VOX4NOZ0
ドクオはどんどん民家の間をすり抜け、山道へ出た。
整備されていない曲がりくねった道を乱暴に進んでいく。
ヘッドライトさえ照らすのが追いついていないぐらいドクオはスピードを出した。

(`・ω・´) 「ドクオ、事故んねーか?」

( ゚∀゚) 「ママ!死にたくねぇよ!」

('A`)「余裕っす。いっつも走ってますから」

(`・ω・´)
(´し`VP)「走り屋乙」
( ゚∀゚) 
( ^ω^)

それならもう少し早く言えよ、と全員が心の中で呟いたのはドクオには内緒だ。
病院まであと少し。間に合ってくれ、とブーンは願った。

352 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:29:26.54 ID:9VOX4NOZ0
ξ゚?゚)ξ「うーー!!!!」

ツンは必死でいきんでいた。
破水してから大分時間がたっているため、胎児が苦しくないかと心配だったのだ。
しかし焦れば焦るほどうまくいきめずに、唯痛みだけがツンを襲う。

(*‘ω‘ *)「お母さん上手よ!もう頭が見えてるわよ!」

ξ゚?゚)ξ「おか・・・さん」

お母さん。
そうだ私はお母さんになるんだ。
今私はこの子のたった一人のお母さんになるんだ。

その思いがツンを奮い立たせ、最後の力を振り絞ってもう一度いきんだ。

ξ゚?゚)ξ(頑張って!私の赤ちゃん----------------!!!!!!!!)

353 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:29:53.50 ID:9VOX4NOZ0
その時、痞えていた「何か」が ごとっ と音を立てて外れた様な気がした。

(*‘ω‘ *)「息吐いて!ハッハッハッってして!」

ξ゚?゚)ξ「ハッハッハッ」

ぬるり、と暖かい何かがツンの中から出て行く感触の後、
小さい小さい、本当に耳を済ませないと聞こえない程の大きさで

「ホエー」

と聞こえた。
生まれたのだ。

354 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:30:13.47 ID:9VOX4NOZ0
(*‘ω‘ *)「おめでとう、お母さん。元気な男の子よ」

そう言って臍の緒を着けたまま赤ちゃんがツンの胸の上に乗せられる。

ξ゚?゚)ξ「あ・・・」

初めてツンの目の前に現れた赤ん坊は白いバターのようなものを体中に纏い、
顔中くしゃくしゃにしてこの世の空気を肺一杯吸い込んで泣いていた。
その姿はとても弱弱しく、ツンは自分が守ってやらねばと思った。

ξ゚?゚)ξ「・・・初めまして、お母さんだよ」

そう言うのが精一杯だった。
暖かくて小さい赤ん坊を胸に抱き、ツンは一緒に泣き崩れた。
無事に生まれてきてくれて有難う、心からそう思いながら。

355 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:30:28.75 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「あのっ!内藤ですけど、妻はどうなったんですかお!」

ブーンが慌てて駆けつけたのはツンが出産を終えてから一時間後の事だった。
ドクオの少々荒っぽい運転のおかげであれから2時間弱で病院に着くことが出来たのだ。

(・∀・)「内藤ツンさんの旦那さんですか?
       奥さんは今分娩室で経過観察のため休んで貰ってます。
        面会できますがどうしますか?」

( ^ω^)「是非お願いしますお」

出産を終えると2時間は母体の様子を見なければいけないため
分娩室で休まされる。出産は想像を絶する力仕事のため、
突然ショック状態に陥ったり出血多量で危険な状態になったりすることもあるのだ。

356 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:30:45.26 ID:9VOX4NOZ0
( ^ω^)「ツン・・・?」

ブーンがそっと分娩室を覗くとそこには安らかに眠っているツンがいた。
ツンのおでこは汗に塗れ、ところどころ顔面にあざが出来ている。

( ^ω^)「看護婦さん、これどうしたんですかお?」

(・∀・)「強くいきんだときに顔面の毛細血管が切れたんでしょうね。
       奥さんとても安産でしたよ」

( ^ω^)「ツン・・・」

子供のようにすやすやと寝息を立てるツンのそばに立ち、
髪の毛を撫でると急にツンが生きている事への安心だとか嬉しさだとかが
大きな波のようになってブーンに押し寄せてきた。

357 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:31:20.30 ID:9VOX4NOZ0
ξ゚?゚)ξ「・・・ぶーん?」

( ^ω^)「ツン、遅くなってごめんお・・・」

ξ;?;)ξ「・・・ブーン・・・」

ツンはブーンの顔を見ると、安心したのかもう一度泣いた。
震える手でブーンの頬に触れ、その存在を確かめるように抱き寄せた。

( ^ω^)「良く頑張ったお、ツン。ありがとうだお」

ξ;?;)ξ「ブーン・・・」

( ^ω^)「ところで、赤ちゃんはどこだお?」

ξ゚?゚)ξ「新生児室にいると思うわ」

( ^ω^)「そうかお。ツンが部屋に帰る時に一緒に見に行くお」

358 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:31:38.57 ID:9VOX4NOZ0
そんなツンとブーンとのやり取りを聞いたのか、ぽっぽ先生が赤ん坊を2人のところへ
連れてきてくれた。赤ん坊は産湯(生まれて初めて入るお風呂)に入れてもらって
さっき見たよりも綺麗にされてやってきた。

(*‘ω‘ *)「お風呂気持ちよかったね~。ほら、お父さん来てくれたよ~」

( ^ω^)「おとうさん」

ξ゚?゚)ξ「抱っこしてあげて」

ツンにせかされ、おそるおそるブーンは赤ん坊を抱っこする事にした。

( ^ω^)「おっおっおっ、おとうさんですお。こんにちは だお」

慣れない手つきで抱いた赤ん坊はとても小さくて頼りなくて、
息を吹きかけたら崩れてしまいそうなぐらいやわらかな存在だった。
だが赤ん坊の心臓の音や呼吸の音はびっくりするぐらい確かなもので、
それはこの世へ生まれてきたことを喜び、はしゃいでいるかのようにも聞こえた。

( ^ω^)「ウヒヒヒ、かーわいいお」

にこやかに赤ん坊を抱くブーンをみて、ツンはもう一度眠りに着いた。
安らかに眠る赤ん坊と最愛の妻の傍で、ブーンはこれまでにない安らぎを感じていた。

359 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:32:11.38 ID:9VOX4NOZ0
ブーンを無事に送り届けたVIPPER+ドクオは、ぽっぽ産婦人科の駐車場で
ビールを飲みながら打ち上げ権出産祝いを催していた。
それぞれがとても気持ちよく酒を飲み、楽しく談笑していた。

(*゚∀゚)「いや~、ブーンは今頃アカンボ抱いてニヤニヤしてんだろなー」

(´し`VP)「ほんと、なんやかんやで早く着いてよかった」

(`・ω・´) 「なんだかいまいが熱くなってるの見てこっちまで熱くなっちゃったよ」

(*゚∀゚)「そういえばそうだよな。一体どうしたんだよ」

360 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:32:38.85 ID:9VOX4NOZ0

(´し`VP)「俺、前の嫁さんとの間に子供生まれる時今日みたいにライヴで
       駆けつけることが出来なかったんだ。次の日病院に行くつもりでいたら、
       その日の夜病院から電話があってさ、出産の時にトラブルがあったらしくて
       アカンボ死んじゃったんだよ。」

(*゚∀゚)「いまい・・・」 

(´し`VP)「初めて抱いた娘は冷たくって硬くって、もうなんだか俺駄目じゃん、って。
        嫁さんはノイローゼになっちゃって別れてくれとか言うし。
         ブーンにはそんな思いさせたくないからな」

(`・ω・´) 「・・・まあ、飲もうじゃないか」

('A`)「酒買ってくるっすから、飲みましょう」

気を取り直して乾杯をすると、車の窓をコンコンと叩くブーンの姿があった。

361 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:32:58.70 ID:9VOX4NOZ0
(`・ω・´) 「いよ~!おとうさんじゃねぇか!」

(´し`VP)「ツンちゃんはどうだって?」

口々にしゃべりかけてくるVIPPERのメンバーを制止するかのように大きな声で
「あの」と言うと、ブーンは表情を崩さずに話し始めた。

( ^ω^)「・・・僕、今決まっているスケジュールでVIPPERを辞めますお」

(`・ω・´) 「ブーn」

( ^ω^)「わがままなのは解っていますお。でももうちゃんと代わりのギタリストも
        見つけてきたんですお」

362 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:33:17.41 ID:9VOX4NOZ0
(´し`VP)「・・・誰だ?」

( ^ω^)「ドクオですお。」

('A`)「ブーンさん!?」

( ^ω^)「ドクオならVIPPERのギタリストとしてやっていけるはずですお」

( ゚∀゚) 「・・・ブーン、どうしたんだよいきなり」

( ^ω^)「僕は、僕の夢はロックスターでしたお。
        でも僕が夢を追いかけるためにはあったかい家族が必要なんですお」

(´し`VP)「・・・」

( ^ω^)「まずは家族を幸せにしたい、それが今の僕の思いであり、夢なんですお」

ブーンは目に涙を溜めながら震える声で語った。










363 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:33:57.99 ID:9VOX4NOZ0
それから半年後。
小さなマンションから絶えず笑いが響く部屋が一つあった。

ξ゚?゚)ξ「うふふふ、スカルチノフはおとうさんが大好きね」

( ^ω^)「たかいたかーい、だお」

./ ,' 3  `ヽーっ「キャッキャ」

364 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:34:16.47 ID:9VOX4NOZ0
あの後、ブーンはVIPPERとしてステージに立つ事無くバンドから引退した。
今でも少しだけギターを弾いては懐かしむ時もあるが、
息子の成長を目を細めて見守る、おとうさん一年生を満喫している。

VIPPERはドクオを新メンバーとして迎え入れ、今度TV出演が決まったと言う。
この間リリースされたCDアルバムにはブーンと、その家族へ当てられた歌が入っていた。

ブーンとツンの両親は初孫をとても可愛がり、
週末にはかならず家に遊びに来てはスカルチノフの遊び相手をしている。

プニプニはその後、社会人のギターサークルに入り、空いた時間を利用して
路上ライブをしているようだ。

アッーは会社を辞め、のび助のところへ渡米して一緒にバンドをやっているらしい。

ショボンは相変わらずしぃと一緒にいるようだ。
この間どこかのショッピングセンターで見かけたが、2人ともこちらの顔を見ると
そそくさと逃げ出してしまった。こころなしかしぃのお腹が膨らんでいたようだ。

皆それぞれ、今を生きる。
精一杯命の炎を燃やしながら。
そして今日も何処かで紡がれる命の糸は、
確実に僕らにも繋がっているのだ。

それでも、僕は君が横で笑っていてくれたら、それだけで、幸せなんだ。


-Fin

366 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/29(土) 23:35:43.15 ID:9VOX4NOZ0

   /⌒~~~⌒\
 / ( ゚?д?゚ )y─┛~~
(_ ノγ U  ∩_∩)   THANK YOU         ┌───────┐
  α___J _J         and           (|●        ●|
  / ̄ ̄ ̄ ̄\  GOOD-BYE            /.| ┌▽▽▽▽┐ |
 /     ●  ●                   ( ┤ |      |  |
 |Y  Y       \ またどこかで会おうね  \.  └△△△△┘   \
 | |   |       ▼ |                  | \あ\      |\ \
 | \/        _人| ∧∧∩゛    ∧_∧     |     \り\     | (_)
 |       _/)/)/( ゚Д゚)/     (´∀` )   __ n    \が\.  |
 \    / 〔/\〕 U  / ∩∩ (    )o/  \ ヽ    \と\ |
  | | | c(*・_・)  |  |ヽ(´ー`)ノ_|  |  | (__丿    |.  /\ \う | (-_-)
  (__)_) UUUU /∪∪ (___)(_(__) ⊆_    ヽ_┘  └──┘(∩∩)






394 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/30(日) 00:12:27.12 ID:qUj5RMpvO
ヒント:ほぼノンフィクション


393 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 00:11:14.47 ID:NkFAbQUh0
作者乙です
・・・ぃゃ、うん、よかった!

397 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 00:15:00.54 ID:U4sQGAbp0
作者乙でした!
こんなにwktkしながら読んだのは初めてだったよ
もうそれがなくなると思うと・・・(´;ω;`)ウッ

400 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 00:19:26.70 ID:aa0kGhd20
もしかして作者=ブーンorツン??

415 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 00:57:08.12 ID:tVV8h7GVO
出産の感動の話に水をさすようで悪いが、
まだ子供作りたくないなら避妊はちゃんとすべきだと思った
ブーンがおろせとか言ったのは酷いことだとは思うが、
それだけ諦められない夢だったんだろうしさ

416 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 01:00:17.48 ID:Urqc0u1PO
>>415禿同。
全ての子が、心から望まれて生まれてくる子であってほしい。
ブーンが良いおとうさんになって安心した(*´∀`)

426 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 01:51:41.82 ID:/Sg6Qn6P0
何か良く分からないけど、避妊はちゃんとしようと思った。
今までは結構流れに任せてた事があったけど、
赤ちゃんを産む事が大変だって事を読んでて解れた。
…何か何言ってるか意味わかんなくてすまんw
感動したって事を伝えたかった。
作者さん本当に乙でした。

427 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 01:51:44.02 ID:wBOPllO20
>ヒント:ほぼノンフィクション

作者様kwsk

433 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 03:19:12.59 ID:JARolTYuO
今日で終わりか…作者乙!心の底からありがとうor乙!!1!!










446 :作者 ◆UlzhpOM.9Q :2006/04/30(日) 10:10:09.35 ID:ldQ6B+rH0
( ;ω;)まだスレがあるなんて!
これだけ沢山の人が感想を書いてくれるなんて
くじけそうになりながらも続けた甲斐がありました
本当に有難うございました。

>>394にも書いたのですがこの話は殆どのエピソードが実話です。
ツンもブーンもスカルチノフもVIPPER、そしてしょぼんやしぃも実在します。
作者がどのキャラクターなのかはご想像にお任せしますがw

最後に
全てのブーンとツンへ
望まない妊娠、そして性感染症を防ぐためにも
是非積極的に避妊をしてください。
いつか2人の元へやってくる赤ちゃんを心から愛せるように。


449 :VIPがお送りします :2006/04/30(日) 10:21:32.75 ID:jOMFDpkH0
感動した。
作者GJ!そして乙!
たまたまクリッコしたスレでこんなに感動させられるとは・・・

もいちど言う。
作者GJ!お疲れ様!
この胸いっぱいの愛を有り難う。
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【2006/04/30 10:36】 | 〆(・ω・ ) ヨミモノ | トラックバック(0) | コメント(4) |
<<【ξ*´∀`)ξ】 新ジャンル『デレツン』 【ξ゚д゚)ξ】 | トップ | ( ^ω^)のツンは知的障害者のようです その3>>
コメント
面白かった!ノンフィクションってのがすごいな。
作中の描写が細かくて「よく調べてあるなー」と思ってたが、体験談だったからなのか…
【2006/04/30 11:57】 URL | 名乗るのマンドクセ('A`) #79D/WHSg[ 編集]
まとめお疲れ様でした。
【2006/04/30 15:23】 URL | 名乗るのマンドクセ #79D/WHSg[ 編集]
泣けたよ;;
【2006/05/02 16:30】 URL | 名乗るのマンドクセ('A`) #79D/WHSg[ 編集]
…やっぱほとんど実話だったのか……。
あんまこーゆーのは見ないけど、これからは見てみようかな…。
【2006/05/03 05:59】 URL | 名乗るのマンドクセ('A`) #79D/WHSg[ 編集]
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