トマトペースト
<<怖い話しようぜ!! その3 | トップ | コメント募金はじめますた(6月30日まで)>>
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-->
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 |
<<怖い話しようぜ!! その3 | トップ | コメント募金はじめますた(6月30日まで)>>
怖い話しようぜ!! その4
http://ex15.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1151566487/

その1 「歳火」前編
その2 「歳火」後編(分岐したシナリオ)
その3 怒濤のカオス編
その4 ヤマビコ編 ←いまココ





348 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 14:33:49.71 ID:QdhXkfeQ0
どうも>>1です。保守ありがとうございます( ゚∀゚ )
えーと、3時過ぎくらいに新しい話を投下します。
でも、あまり期待しないで待っててくださいね(´・ω・`)
ではノシ






360 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:30:50.13 ID:QdhXkfeQ0
昨日、僕は唯一の友達と家で話していた。

「よう」
「相変わらず不健康そうだな」
「お互い様だろ」

こいつと僕とは、境遇が良く似ている。
僕らは根本的に社会生活を営めない、典型的な引きこもりだ。
今はもう親のスネを齧れる歳でもないから、かなりグレーな方法を駆使して生活保護を受けて暮らしている。
日がな家でゴロゴロして暮らすだけの、ぬるい生活。
何も生み出さず、何も考えず、ただ生きている人生。

「お前さあ、先月の振込みあった?」
「いや、ない」

そう、なぜだか先月から急に振込みが止まってしまったのだ。
もともとかなりイリーガルな形で生活保護を受けていたのである。
もしかするとそれが露見してのことかもしれない。

361 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:31:22.57 ID:QdhXkfeQ0
「どうするよ」
「どうしようか」

こうして会話をするのは、彼だけだ。
彼もまた同じようなものらしい。
僕らは26にもなって、人間関係を築けずにいる。

「まあ、別にこのまま死んじゃってもいいしな・・・」
「まあ、そんなに楽しいことがあるわけでもないし・・・」
「あの、さあ」
「なんだよ」
「お前、最後に家出たのって、いつ?」
「最後は・・・半年前かな。どうして?」
「いや、俺も今日お前の家に来たのを除いたらそんなもんなんだけどさ、半年前から今まで、誰かと会った?」
「あー、いや、ないな、そう言えば」
「うん、俺もお前と会っただけなんだよな」

363 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:32:34.25 ID:QdhXkfeQ0
僕らが半年も誰とも会わない、とは不思議に思われるかもしれないが、
僕らが今住んでいる土地は生活保護の受給の関係でひどく辺鄙な場所である。
人通り自体少なく、だから人と会うまいと思えば本当に会わずに済んでしまうのだ。

「それがどうしたの?別に大したことじゃないじゃん」
「いや、ま、そうなんだけどさ・・・」

普段から挙動不審なヤツだけど、今日は特別に変だ。

「あのさ、ウチ、電気止まっちまって」
「あ、ウチも」

そう、生活保護の金が入らなかったというのもあるが、僕は電気代などの公共料金
を滞納してしまい、ついに先月からそれらが止まったてしまったのである。
幸い家からは川も近くにあり、必要とあればそこから汲んできていたので
水に関しては大して問題はなかった。

人間、水さえあれば案外なんとかなるものである。

364 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:33:18.29 ID:QdhXkfeQ0
それにしても、こいつまで同じような状況だったとは。
やはり、社会性のない人間に極端な形とはいえ社会生活を営ませるのは
無理なのかもしれないな、と僕は漠然と考えていた。

「どうした?それで様子が変なの?」
「いや、ま、それもあるんだけどさ・・・その、なんというか」

そこまで言って彼は口をもごもごとし、言葉を濁す。
どうしたのだろう、と思ったが、僕にしてもいくらこいつが友達とはいえ他人は他人なので
そこまで興味はなかった。

僕はぼうっと久しぶりに見る空を眺めながら、長いあくびを一つした。

三十分ほど経ったころだろうか、僕は少しだけうとうとしながら縁側に座っていると、
彼はようやくと口を開いた。

365 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:34:02.43 ID:QdhXkfeQ0
「なあ、俺って、俺らって、生きてるのかな」
「え?」

彼は突然そんなことを言い出した。
僕は彼の意図することが何も分からず、口をぽかんと開けて彼を見つめた。

彼は相変わらず口をもごもごさせながら、たどたどしく言葉を続けた。

「いや、俺、思うんだけど、確かに俺ら、今こうして喋ったり、呼吸したり、水飲んだり、してるよ。
けどさ、だからってさ、生きてるって、言えるの?
ていうかさ、もしかしたら、俺らって、俺らが気付いてないだけで、
もしかしたらもうずっと前に死んでるんじゃないの?
だから、誰にも会わないし、誰とも関わらないでもやっていけてるんじゃないの?

そういう風に思ったこと、お前、ないわけ?」

「・・・なに言ってんだよ、お前・・・」

そう言って僕は笑い飛ばそうとしたが、口からは少しの笑いも漏れなかった。

366 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:34:30.99 ID:QdhXkfeQ0
「俺、電気が止まった時に思ったんだ。
これは、金を払ってないからとかいうよりも、もう俺が死んでるから止まったんじゃないのか、って。
死んだ人間に電気を送っても、意味がないからじゃないか、って。
それ以来、俺、怖いんだ。
自分が、もう死んじゃってるんじゃないのか、って。
だから誰とも会わないし、会えないし、話もできないし」

「待てよ!待てって。落ち着けよ。
いいか、お前は、今俺と話してる。そうだろ?
だからそんな風に思いつめても」

「だから、お前も死んでるんだよ、きっと。
だったら、辻褄が合うもの」

彼はそう言うと自分の言葉に対してうん、そうだよな、と首を縦に振った。
正直、どこがどう辻褄が合っているのか分からなかったが、しかし僕はそれ以上何も言えなかった。
なぜならば、僕もずっと以前から、彼と同じように考えていたからである。

367 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:35:05.82 ID:QdhXkfeQ0
人間は社会に生きる動物である、と誰かが言っていた。
では、社会と隔絶した僕らは、もはや人間ではないのだろうか。
いや、もはや生きてすらいないのだろうか。

手を握って、開いてみる。
手は拳になり、そして掌を露わにする。
世界は何も動かない。
仰向けになったまま、ごろりと体を反転させてみる。
視線はカビた天井からぼろぼろになった木枠の窓に向けられる。
世界に動静はない。
あああ、と何もない空間に向かって声を出してみる。
世界は何も答えない。
彼は世界に何も及ぼさない。
世界は彼に何も及ぼさない。

では、僕はいま、生きているのだろうか。

彼はしばらく考えたが、どうにも答が出なかったので力なく瞼を閉じた。

368 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:36:18.36 ID:QdhXkfeQ0
遠い景色が蘇る。
夕景、僕はあぜ道を通って家路を急ぐ。
じっとりと汗で滲む額をランニングシャツでぐいと拭い、虫かごを片手に砂利道を駆けている。

背後には大きな山々が聳え立っていた。
夕焼けを背に、山は緑をその身に隠し、ただひたすら黒く、そこにあった。
大きく、暗く、どこまでいっても相変わらず「そこ」に存在する名も知らぬ山。
僕は夕刻の山が嫌いだった。

畏怖していた。
 
ばあちゃん、僕、あのお山が怖い

戦利品であるオニヤンマの入った虫かごを祖母に見せながら、僕は祖母の膝にすとんと腰を預けた。
祖母は虫かごの中のトンボに向かい人差し指をくるくると回す。
そのまましばしトンボと戯れたあと、思い出したように口を開いた。

お山さんにはなあ、ヤマビコさんがおるけえねえ

369 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:37:28.78 ID:QdhXkfeQ0
「ヤマビコ」が「山彦」となって僕の頭で結びつくのは、
それから何年かしてからのことだった。


おばあちゃん、ヤマビコさんってなに?お化けなん?


僕は、見たこともない「ヤマビコ」を、何か鬼や化け物のようなものとして想像し、
祖母の膝の上でぶるっと震えた。
そんな僕の様子を見て、祖母は僕の頭を優しく撫でながら言葉を継いだ。


ヤマビコさんは、ヤマビコさんよ。
怖あないよ。
私も死んだらヤマビコさんになるんやけえ。


祖母はそう語りかけてはころころと笑った。
僕は結局祖母の言葉の意味を掴みかねたが、
祖母がおかしそうに笑うのを見て少しだけ安堵を覚えたのだった。

370 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:38:27.64 ID:QdhXkfeQ0
「・・・あ、なあおい」

「・・・ん」

友の声に目が覚めた。太陽が眩しい。どうやら少し眠っていたようだ。
心配そうに僕を覗き込む友人。
その怯えを讃えた瞳の色がなぜか、追憶のあの日山を怖がった自分の姿と重なった。

「俺らは、ヤマビコさんになってしまったのかもな」

「え?何?ヤマビコさん?」

「うん。あのさあ、俺、大学にいるときに民俗学を専攻してたんだけどーー」

そう前置きして、僕は彼に祖母から聞いた話を説明した。

僕の故郷では、死んだ人間はヤマビコという妖精になり、
天国にも地獄にも行くことなく未来永劫山に閉じ込められる。
そしてヤマビコは、人間の言葉を木霊させるだけのために存在していく。
何でも、大昔に彦という男が山の神の怒りを買ってしまい、
それ以来ヒトは天国にも地獄にも行けなくなってしまったのだそうだ。

「だから、俺たちはもうヤマビコになってんのかもな」

371 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:39:22.73 ID:QdhXkfeQ0
説明し終えた時、自分でも下らないこと言ってるよな、と自嘲的に笑った。
しかし友人は少しも笑っていない。
しきりに、そうか、そうだよ、と頷いている。

「おい、他愛もない民話だぞ、本気にするなよ」
「いや、でもさ、天国でも地獄でもない場所ってどこ?それって今俺たちが生きてる世界ってことだろ?だったらさ、俺らが死んだまま今こうしてやり取りしてても、全然おかしくないってことじゃない」
「作り話だよ」
「そうかな。でも、お前はじゃあどうしてそんな話を俺にしたの?」
「それは・・・・・・」
「お前だって本当は、生きてるか、死んでるか、不安に思ってるんだろ?」
言い当てられて、僕は狼狽した。
「行こうよ」
彼は、僕の返事を待つことなくすっくと立ち上がった。
「行くって、お前、どこに行くんだよ」
「山だよ。山に登ろうよ」
「山って、どうしてそんな・・・」

372 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:40:35.31 ID:QdhXkfeQ0
「もし、俺らがヤマビコになってるんだったら、俺らにはもうヤマビコは響かないはずだろ?」
「・・・どういうこと?」
「『ヤマビコは人間の言葉を木霊させるだけのために存在する』、だったら人間以外の言葉は木霊しない、
そして俺らがもうもう死んでたら、山でいくら叫んでも、ヤマビコは答えない」

それだけ言って彼はすたすたと歩き始めた。山の方に向かって。

「おい・・・・・・おいちょっと待てよ!」

僕も、その後に続いた。

「山なんて登るの・・・・・・いつぶりかな・・・・・・」

ぜえぜえと肩で息をしながら友人は山を登っていく。

「知らないよ・・・・・・10年は登ってないけど・・・・・・」

僕もはあはあと口で息をつきながら、懸命に足を上げる。
正直、かなりしんどい。
登山のための山ではないのだろう、山道はおざなりな整備が施されているばかりで、
素人が楽に歩けるようなものではなかった。

373 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:41:42.01 ID:QdhXkfeQ0
「・・・・・・こんな風にキツイのも・・・・・・錯覚なのかな・・・・・・」
「だったら・・・・・・さっさと覚めて欲しい・・・・・・よ俺は・・・」

元々少ない二人の口数は、疲れも手伝って更に少なくなっていく。

砂利で足をとられながら、急な勾配を呪う。

どうして俺はあんな話をしてしまったのだろうか。
あんな話をしなければ、今頃ーー

(今頃・・・?)

今頃、どうしていたというのだろう。

電気も、水道も、ガスも通じていない家で、食料も尽きかけていたような我が家で、
一体何をしたというのだろう。

話す相手もおらず、語る言葉も持たず、寝て、起きて、また寝て。

(生きてない、のかな、やっぱり)

そう思って彼の背中を見上げた。

彼は随分辛そうだったが、一歩一歩ゆっくりと、懸命に、着実に山を登って行った。

374 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:43:08.03 ID:QdhXkfeQ0
「なあ・・・・・・何で俺らはさ・・・・・・」

「え・・・・・・なんだって・・・・・・?」

「何で俺らはさ・・・・・・死んでないか・・・・・・確かめようとしてるんだろうな・・・・・・」

「・・・・・・」

「別に、生きてても・・・・・・死んでても・・・・・・どっちでもいいって思ってた・・・・・・」

「・・・・・・うん・・・・・・」

そう言って、僕らは同時に腰を下ろした。
少々、無理をし過ぎたようだ。
Tシャツで額の汗をぐいと拭うと、僕らはどちらともなしに語り始めた。

「最初に社会が嫌になったのは・・・・・・」

「いつかな・・・」

375 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:43:30.75 ID:QdhXkfeQ0
「俺は、いつかはよく分からない。

いつかは分からないけど、いつの間にか誰に対しても、何に対しても興味が持てなくなってた。

小さいことが色々積み重なったのかもな。

努力しても認められなかったり、平気で人から裏切られたりして。

最初はさ。やっぱりこんなんじゃダメだな、って思ってた。

頑張らなきゃいけない、って。

でも、何に対して頑張ればいいのか分からなかった。

でも、それでも、頑張ろうって思ってた。

朝起きて、頑張ろうって思う。

昼から、頑張ろうって思って、昼になったら、ご飯食べてから頑張ろうって思って、

ご飯食べたら、ちょっと昼寝してから頑張ろうって思って、目が覚めたらもう夜で、

それだったら、明日から頑張ろうって思って」

376 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:44:11.51 ID:QdhXkfeQ0
「・・・・・・」

「でも、その『頑張ろうとした明日』は、いつまで経っても来ないんだ。

頑張ろうとしても、頑張れないんだ。

その内、なんで頑張らなきゃいけないんだろう、って思った。

誰のために、何のために頑張らなきゃいけないんだろう、って。

生きることって、どうしてこんなに複雑なんだろう、って。

昔の人は自分の、自分のためだけに生きてたはずだな、って考えたんだ。

そう思ったら、もう、社会には居れなくなった。」

「・・・・・・分かるよ」

僕は手元にあった木切れを拾うと、誰もいない空間に向かってひゅっと投げつけた。

377 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:44:49.31 ID:QdhXkfeQ0
「でもさ、俺は今こうして山を登って、ちょっと分かったんだ。
山は、たぶん100年も、1000年も前から山なんだよな。
変わることなく、ずーっと山。
でも、人間は100年経てば結構変わるし、1000年経てばすごく変わる。
だって、人間は頑張ってるんだから。
頑張らなくても生きていけるのに、頑張って進んでるんだから。
それって、もしかしたらすごいことなんじゃないの?」

「かもな・・・・・・」

「だからさ、俺、頑張らなくても生きていけるって、そんな風に嘯いて、
今の暮らししてたけどさ、本当の最初の部分は、やっぱり頑張りたいって、
そう思ってたはずなんだよね。
だけど、それは思うだけで、すぐに行動には移さなくて、ただ頑張ろう、
明日から頑張ろう、ってそんな風に、うん、逃げてたんだよ。
自分の心が弱かったから、頑張りたいのに頑張りたくなくて、頑張れなくて、
その責任を社会に押し付けて・・・」

彼は、静に泣いているような気がした。

378 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:45:32.21 ID:QdhXkfeQ0
「・・・・・・僕は、逃げてたんだよ」

「・・・何言ってんのか、よく分かんねえよ・・・・・・」

「ごめん・・・・・・」

「いいよ、別に・・・・・・」

いいよ、別に。分かんないけど、ほんとは僕にも、よく分かるから。

「ダメだったんだな、俺たち・・・・・・」

「うん・・・・・・」

「生きたい、よな・・・生きてたいよ、俺は・・・・・・」

「うん・・・うん・・・・・・」

「生きてたらさ、もう一回、戻ろうな・・・・・・」

「うん・・・戻ろう・・・・・・」

ガササッ、と音を立てて木が揺れた。
僕らは音のした方向に揃って目を向けた。
青い空には、トキのような鳥が大きく舞っていた。

379 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:46:14.71 ID:QdhXkfeQ0
僕らはぜえぜえ言いながらゆっくりゆっくり山を登っていた。

お互いもう喋ることはない。

あとは山頂に辿り着くのを目指すだけだ。

そこに何があるのか、そこで何が待っているのか。

それは分からない。

ただ、今は山を頂上に目指して登るだけである。

「着いた・・・・・・」

名も知らぬその山に辿り着いた時には、少し日も傾きかけていた。

眼下に広がる青々とした森。木。土。

僕らは確かにこの足で、自らの足でこの山を登りきったのである。

380 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:46:33.61 ID:QdhXkfeQ0
「着いたな」

「うん、着いた」

「ヤマビコ、試してみろよ」

「え、いや、それは」

「ん?おい、ちょっとあれ」

「え?」

「あれ、人じゃねえの?」

「え・・・あ、ホントだ!人だよ!」

視線の先、向かいの山には人らしい影があった。

381 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:47:13.73 ID:QdhXkfeQ0
「おい、あれ、結構人いるな」

「そうだね、もしかして、あの山は登山の名所なのかな」

「かもな・・・にしても、数が多すぎない?」

「今日って休日だったっけ?」

「さあ・・・知らない」

向かいにそびえる山には、確かに普通では考えられないくらいの数の人間がいるように見える。
とは言え登山なんてとんと縁のない生活を送っていたため、登山というものに関してどれくらいが
適正な数なのかは分からないのだから、案外あのくらいは普通の数なのかもしれない。

「あ、そう言えば」

と彼が言うと何やらポケットをゴソゴソし始めた。

「これ、持ってたんだよ」

彼はオペラグラスを手にしていた。

382 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:48:14.42 ID:QdhXkfeQ0
「どうしたの?それ」

「いや、俺さあ、たまにこれで空眺めるのが好きだったんだ。星見たりとか」

知らなかった。そう言えばいつかコイツが星の話をしていたような気もする。
彼が高校の時の部活はなんだったっけ・・・。

「あ、見える見える。うん、人だね、確かに人。やっぱり結構いるよ」

「どれどれ、俺にも見せろよ」

そう言ってオペラグラスを覗くと、視界の先には確かにたくさんの人間がいた。
千人?一万人?いや、もしかするともっと?

意外なことにそこには外人と思しき人たちも混ざっていた。少しではなく、沢山。

本当に観光の名所なのかもしれない。

「ん?」

「どうしたの」

383 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:49:57.34 ID:QdhXkfeQ0
「いや、あの山の人たち、皆揃って何か口をパクパクさせてるんだよね」

「ヤマビコ試してるんじゃない?」

そう言って彼はクスクスと可笑しそうに笑った。

「そうか・・・にしても、案外声って届かないもんなんだな」

「そうなのかなあ・・・」

「うん、これ見てる限りだと。だからどっちにしてもヤマビコは響かないんじゃ」

すると彼は、急に大きな声を出して、やっほーーー、と叫んだ。

僕は少し驚いて、持っていたオペラグラスを地面に落としてしまった。

少しの間が空いて・・・

『やっほーーー』

「・・・・・・返ってきたね」

「・・・所詮、作り話だからな」

僕らは顔を見合わせると、照れくさそうに笑い合った。

384 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:50:52.08 ID:QdhXkfeQ0
さて、と僕は息だけの声で呟くと、彼の方に向き直った。

「じゃあ、明日から・・・・・・ああ、いや」

「今日から、ね」

「うん、頑張ろう。山を降りたら、すぐにでも」

「だね」

僕らは、何か吹っ切れたように弾む足取りで山を降り、その足で街に向かった。

386 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:51:22.26 ID:QdhXkfeQ0
街は、静かだった。

「静だな・・・・・・」

「うん・・・・・・」

387 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:51:54.58 ID:QdhXkfeQ0
街には、誰もいなかった。

「誰もいないな・・・・・・」

「そうだね・・・・・・」

388 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:52:28.85 ID:QdhXkfeQ0
街は、とても静かだった。


「・・・・・・おーーーい!!!!」

『おーーーーい!!!!』


ただ、ヤマビコだけが木霊していた。


(終)





390 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 16:58:22.82 ID:bcsPc6Yw0
乙です><またまた読解力のない俺に教えてコナンくん!
向いの山に居たたくさんの人たちは何してたの?ヤマビコだったの?
なんで街中でヤマビコが響くのは何故だぜ?

392 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 17:03:56.63 ID:QdhXkfeQ0
>>390
『人間=社会で生きる動物』と定義すると、『社会と隔絶した彼ら≠人間』となっていた。
そして、ある日山の神が人間以外の動物を残して、全て抹殺した。
(このエピソードを裏付ける『彦』の話があったのですが、長すぎて割愛しました)
けれども彼らは人間ではなくなっていたため、命を救われた。
そして、亡くなった人たちは『ヤマビコ』となって山に存在していた。
彼らが見たのは、彼ら以外の全世界の人たち(だから、外人もいた)。

つまりこの話は、社会性を失ったことで自然に生かされたのだけれど、
社会性の大切さを取り戻した時には社会が消滅していた、という何とも救いないお話だったりします。
蛇足すいません(´・ω・`)


396 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 17:20:00.22 ID:bcsPc6Yw0
なるほど
面白かった ありがと
次とかあるならネットネタの怖いのとか読みたいです><
2ちゃんねるとかを題材にしたのとか
ダメっすか

397 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 17:21:35.98 ID:QdhXkfeQ0
>>396
NETっすか(´・ω・`)
おもしろそうですね( ^ω^)
閃くことがあったらまたスレ立てますね。
思いつきじゃないと書けないもので・・・('A`)


398 :VIPがお送りします :2006/06/30(金) 17:25:12.25 ID:bcsPc6Yw0
閃いたら是非
wktkして待ってます






>>1さんのブログもどうぞ。
肉欲企画。
18歳未満閲覧非推奨なんで、リンクは貼ってないですけど、
お気に入りに入ってるお( ^ω^)
※肉欲企画。は小説のブログではありません。カオスなブログですw

スポンサーサイト
【2006/06/30 23:50】 | 〆(・ω・ ) ヨミモノ | トラックバック(0) | コメント(2) |
<<怖い話しようぜ!! その3 | トップ | コメント募金はじめますた(6月30日まで)>>
コメント
>>カオスなブログですw
これには同意せざるをえない。
【2006/07/02 11:45】 URL | 名乗るのマンドクセ #79D/WHSg[ 編集]
今わかったんだけどこの作者の作風とかさ、こういうSS好き。書く人も濃い人生の人が多いしね。てかそーじゃないと書けん。
こういう混沌の中に社会性とか第三者視点っぽい秩序めいたものが入り混じったのって色々な人の心に自分が溶けてその人になったような錯覚を覚えて、集中力の0な私でも熟読できる
【2006/07/15 05:54】 URL | 名乗るのマンドクセ('A`) #79D/WHSg[ 編集]
トラックバック
トラックバックURL
http://nantara.blog73.fc2.com/tb.php/804-ed11251a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
オススメ

月別アーカイブ

カテゴリー

ブログ内検索

個人的に大好き


リンク

最近のコメント

最近のトラックバック

その他

2ちゃんねる関連リンク・2ちゃんねらオンリ検索エンジン

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。